「そう、あなた、うちの店でお気づきになりましたかね、みなさん、安心して買い物していらっしゃる。私はね、売り上げよりも何よりも、みなさんが私たちを信頼してくれる姿を見られることがありがたい」

2012年3月、日本経済新聞が行った顧客満足度調査で、スーパー部門1位に輝き、駐車場にはベンツやBMWといった高級車が何台も並んでいるという「セレブも認めるディスカウンター」スーパーオーケーを創業した飯田勧社長はいう。

インタビューを終えてから、私(野地秩嘉)は「安心している客の姿」を見るため、スーパーオーケーのサガン店に寄った。しかし、客の安心とはどういうものかよくわからなかったので、198円ののっけ弁当を買って、うちに戻った。その後も「安心する客」を探しに、自宅から近いオーケー用賀店に2度、出かけていったけれど、これまた、はっきりとした姿を見つけることができなかった。またしても、弁当やワインを買っただけに過ぎない。

これではいかんと、私は飯田に連絡した。

「すみません。いったい、客のどこを見ればいいんですか」

回答は次の通りだった。

「牛乳やヨーグルトや納豆の棚に行ってください。お客さんの様子を見てください」

私はまた用賀店へ買い物に行った。午前11時ころだった。ヨーグルトが並んでいる棚の前に立ち、価格を確かめた。メグミルクのヨーグルト「牧場の朝」が78円。メーカー価格は160円。やっぱり安い。買うことにした。そして、いつものように1番新しい日付のそれを探そうと、棚の奥に手を伸ばしたのだが、一番前に並んでいるのと棚の奥のヨーグルトは同じ日の製造だったのである。念のため、列にあるヨーグルトすべての製造日を調べたが、いずれも同じ日付だった。

なんだ、それなら、棚の奥まで手を伸ばさなくていい……。

あっ、と思った。