2013年6月8日(土)

大きすぎる「内部告発」のリスクとは

わが身と家族を守る鉄則

PRESIDENT 2011年12月19日号

久保田正志=構成 尾崎三朗=撮影

食品メーカーの賞味期限の改ざん、不当表示など企業の不祥事がいくつも明らかになって以来、「内部告発」の重要性が叫ばれている。しかし、そんなことをしたらクビが危ないのではないか。

2006年に施行された公益通報者保護法は、会社の違法行為を内部告発した社員が不当な扱いを受けないようにするための法律だ。

ところが、法律には内部告発(法律では「公益通報」)の定義や告発のルートについて厳しい条件がつけられており、実際には機能しない場合があるという。まず、通報内容は犯罪行為に関わる事例でなければならない。

「たとえば、社長が愛人を秘書にして公私混同の経営をしているとします。しかしこれは直接犯罪行為に結びつくわけではないので、告発しても法律の保護を受けられません」

神戸大学大学院教授(労働法)の大内伸哉氏が説明する。

また、社内への通報は保護を受けやすいが、監督官庁に通報するときは保護の条件が狭まり、報道機関など外部への通報の場合は要件がさらに厳格になる。

外部への通報が保護されるには、社内に通報すればほぼ確実に報復されるとか、証拠隠滅のおそれがある、社内通報では相手にされなかった、生命・身体に危害を加えられる急迫した危険がある、といった条件が必要だ。

一方で、内部告発を行った社員に対して「会社の名誉・信用を毀損した」という理由から会社側が懲戒処分を科すことも珍しくない。

たとえば、予備校の講師が理事長の不正経理問題に関して記者会見を開き解雇されたケース。この裁判では、1審は解雇処分を無効としたが、2審は講師の行動を「雇用関係の信頼を踏みにじる行為」とし、解雇は有効と判断した。

「判例を見るかぎり、まずは内部通報をするなど企業内部での解決を図っていない場合は、会社側の処分が有効となる可能性は十分にある」と大内教授はいう。

また、公益通報者保護法が禁じているのは、通報者への解雇や降格、減給といった、あくまでも目に見える形での報復処分。仮に査定や昇進で不利な扱いをされても、それが不当であるかどうかは判断しにくい。

現状では、万全の保護を受けられるわけではないのである。

神戸大学大学院 法学研究科教授 大内伸哉
1963年生まれ。東京大学法学部を卒業後、同大学院修了。『労働条件変更法理の再構成』『どこまでやったらクビになるか』など著書多数。近著『君は雇用社会を生き延びられるか』。

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