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30代の破綻危険度

次に気になるのが「娯楽費」。観劇は「投資」ともいえるが、毎週のように舞台鑑賞に出かけるのは「投資」ではなく「浪費」だ。Bさんは観劇代の上限を月2万円と決め、回数を減らした。

2人で通っていたジムも退会して公共施設に通うことで、教育費を2万円から6800円にダウン。ほかに通信費、被服費など各項目を少しずつ減らして月1万円だった預貯金を約12万円に増やすことに成功した。

FPの仕事をしていると「貯蓄はどれくらいあればいいか?」とよく聞かれる。私は「とりあえず年収の半分を目標に」とアドバイスしている。それがクリアできれば、マイホームの取得や投資など次のステップに進めるからだ。

だがBさんはまだこの最初のステップがクリアできていない。Bさんは「子どもが生まれたら夫1人の収入でやっていきたい」というが、マイホームを持ちたいなら、妻が仕事を辞めるのは厳しい。

マイホームのための費用、子どもの教育費、老後費用は計画的に準備する必要がある。Bさんの場合、35歳をすぎてからこれらすべてを準備しなければならず、妻が仕事を辞めるのは大きなリスクだ。

現状の夫婦共働きなら月々12万円以上が貯蓄できるが、妻が仕事を辞めるとそれができなくなるばかりか、ボーナスで生活費を補填する必要が出てくる。とりあえずマイホームは後回しにして子育てをしながら貯蓄額を増やすことを考えよう。

同時にBさんは、老後に向け12万円のうち1万円ずつ投資信託(ETFや外貨建てMMFなど)で「積み立て」をスタートさせた。超低金利下のいま、預貯金でお金は増えない。毎月1万円を投資信託で30年間投資し続け、もし3%で運用できれば約590万円になる。しかし運用しなければ360万円だ。この差は大きい。

30代は、時間を味方にできるのが強みだ。幸いBさんは投資に興味があり学ぶ意欲も強い。老後までの25年という時間を活用し、情報収集のみで終わらず運用することでお金を増やしてほしい。ハイリスクな商品に手を出すことはお勧めしないが、ミドルリスクくらいまでのものを狙えば、たとえ失敗してもやり直しがきく。

老後資金の運用は、50代をすぎると失敗が許されないため勧めないが、まだ30代のBさんなら、チャレンジしてもいいのではないだろうか。