1994年に日本初の禁煙外来を立ちあげた東京女子医大の阿部眞弓医師は、メンタル、身体の両面で禁煙を手厚くサポートしている。阿部氏が特に重視するのは、禁煙の動機だ。

「自分なりのはっきりした禁煙動機があると成功しやすい。病気の治療に必要だったり、スポーツの能力向上や、海外旅行をするためといった具体的な動機だ。漠然と健康のため、というだけでは弱いので動機を強くするための介入を行います」

目標設定の仕方も重要だ。

「一生吸わないなんて大目標を立てると、達成感を得にくい。山登りのように、1合登ったら景色が変わったね、じゃあ次の1合もがんばってみようかというように、手の届く範囲で小刻みな目標を設定し達成する。この成功体験によりオレってすごいなぁと自己効力感を味わうことができます。こうして1日1日禁煙を継続していくのがポイントです」

配偶者との関わりも成功を左右する。

「今回は本気で禁煙するから応援してほしいという言葉を、『私メッセージ』で妻に伝えてもらうようにしています。そうすると妻のほうは『禁煙続いているんだ、すごいね』と応援してくれます。夫の禁煙に興味と期待を持ち、信じてあげることが大切です」

前出の山崎氏によれば、愛する夫にタバコをやめさせたい一心でセミナーに参加してくる、非喫煙者の妻もいるという。

「思いやりのない配偶者の言動は禁煙への抵抗を生み、逆効果。『愛のない妻よりタバコのほうがいい』と言い切る男性が実在することを、奥様は肝に銘じてほしいですね」

最後に、阿部氏の禁煙外来にかける思いをお伝えしておきたい。

「私の専門は呼吸器です。肺ガンに罹った患者さんが、それでもタバコをやめられない姿を見て、こんなことはあってはならない、なんとか禁煙指導ができないかと思ったのが原点です。喫煙者は、なんてもったいないことをやっているのでしょう。日に何度も発癌物質をふりかけられ、肺が、肝臓が、血管が、大切なあなたの命が泣いているんですよ!」

何を隠そう、筆者は禁煙7日目。禁断症状は、ほぼなくなった。2度と、タバコに騙されることはないだろう。

(PIXTA=写真)
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