なぜ、禁煙に失敗するのか

心の支えだと思っていたタバコが、実は、一層依存させることを目論むペテン師だったとしたら……。そんな奴とはオサラバしたい! と誰もが思うだろう。だが、せっかく達成した長期の禁煙記録が、たった1本の「もらいタバコ」でもろくも崩れ去ってしまう経験は、喫煙者なら1度や2度はしたことがあるはずだ。なぜ、禁煙の継続は難しいのだろう。

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「タバコでリラックス」はウソ

「1度、自転車の乗り方を覚えると、一生忘れることはありませんよね。実は、タバコも同じことなんです」(磯村氏)

初めてのタバコはまずい。それを無理して吸い続けていると、ある日うまいと感じる日が訪れる。この間、約1カ月。継続的な喫煙によってドーパミン神経が弱り、タバコを吸った瞬間だけドーパミンが出るようになって初めて、タバコをうまいと感じる。喫煙者は「大人になれた」などと喜ぶわけだが、実は、タバコをうまいと感じる回路が完成した瞬間は、洗脳が完成した瞬間だったわけだ。

そして、自転車の乗り方同様、1度繋がった回路は一生消えない。だから、たった1本のもらいタバコで回路が活性化し、いとも簡単に禁煙は破られるのだ。

「油断をしないことです。前回禁煙に失敗したのは、自分が情けない人間だったからではなく、回路が消えないのを知らなかったからだと考え、1本でも吸ったら元に戻るのだと肝に銘じることです」

しかし、ひとりで禁煙を続けるのは辛いことだ。依存度が高い場合はなおさら。タバコの禁断症状は麻薬に比べれば軽微だが、なかには幻覚が表れるほど激しい禁断症状を経験する人もいる。禁煙外来の力を借りるのも手だろう。