2013年5月31日(金)

これが3本柱「財務、マーケティング、事業戦略」 -キヤノン・人材開発センター

PRESIDENT 2011年9月12日号

著者
勝見 明 かつみ・あきら

1952年生まれ。東京大学教養学部教養学科中退後、フリージャーナリストとして、経済・経営分野を中心に執筆を続ける。著書に『鈴木敏文の統計心理学』『選ばれる営業、捨てられる営業』ほか多数。最新刊に『全員経営』(野中郁次郎氏との共著)。

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勝見 明=文 的野弘路=撮影

CILはステータスオークションの場

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キヤノンのマネジメント研修体系

「できれば恥をかきたくない」。社内の各部門から参加する企業研修などで参加者の多くが不安に思うのは、自分の実力のレベルが露呈されることではないか。サルやゴリラの集団では、互いに胸を叩く、歯をむき出しにするなど、示威行為を行うことで、実際には闘わずに組織内の優劣を決める。「ステータスオークション」と呼ばれる行動で、直訳すると「実力の競り」ということになる。

企業においても組織を硬直化させないため、ステータスオークションが必要といわれる。まわりの社員の実力を知ると同時に、自分の実力レベルに気づく。キヤノンが行っている社内ビジネススクールともいうべき「キヤノン イノベーティブ リーダー研修」(通称CIL)は、まさにステータスオークションの場だ。

実力レベルが問われるのはアクションラーニングと呼ばれるプログラムだ。受講者全員が個別テーマを設定し、半年間の研修期間中にビジネスプランを練り、A4サイズ20枚ほどにまとめる。

取材に訪れた日は、課長代理と主任クラスが対象のCIL1の研修初日。30代半ば~後半の20名の受講者はみな緊張の面持ちだった。選抜の割合は1割ほどという精鋭たちだ。彼らは半年後に行われる公開発表会で、並み居る幹部の前でプレゼンしなければならない。

「いわば、所属先を離れた“他流試合”です。そこで自分の力量が明かされる。厳しさから研修途中でうまく進められず、“空中分解”を起こす者もいます」と話すのはCILを立ち上げた人事本部人材開発センターの本間道博所長だ。

「公開発表会には自分の上司の部長ほか、他の受講者の上司もいて、どんどん突っ込まれ、白熱します。結果、評価されて、実際に試してみろと後押しされる者もいれば、評価されない者もいる。本人も相当勉強しなくてはなりません」

人材開発センター所長 
本間道博氏

キヤノンは若手社員にも数字に責任を持たせる仕事の厳しさで知られるが、このアクションラーニングも一般的な社員研修と比べて格段に厳しい。その理由を本間氏はこう話す。

「CILが始まった2003年当時は、現会長の御手洗(冨士夫・当時社長)の改革の成果で増収増益が続き、財務も良好でした。それに安心していると社員はユデガエルになる危険性がある。イノベーションを起こせるビジネスリーダーを意図的かつ計画的に育成する取り組みが始まったのはトップの強い意志からでした。好調だからこそ厳しさを求め、健全な危機感を持たせようとしたのです」

キヤノン版ビジネススクールはCIL1に始まり、課長級(40代前半)のCIL2、部長級(同後半)のCIL3を経て、役員候補生の「経営塾」へと続く。CIL3や経営塾ではトップにプレゼンを行い、評価されれば事業に採用される。

第一段階であるCIL1は毎月1回、金土の1泊2日で行われる。場所は東京・目黒区の創業の地に06年に建てた研修施設「キヤノン・グローバル・マネジメント・インスティテュート」。併設の宿泊施設は一流ホテル並みの設備だ。

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