業界関係者の中には、百貨店とGMSを一括りにして総合とつく業態はもう駄目だと指摘する向きもある。しかし私は百貨店の将来には展望を見出せないが、GMSには再生の可能性が大いにあると考えている。その理由について解説しよう。

百貨店衰退の原因は、そのコスト構造を見れば一目瞭然だ。

百貨店は、各アパレルメーカーから売り上げの35%を家賃として取っている。そのうえ、売れ残った商品はアパレルに返品してしまう。商品消化率(売上数量÷導入数量(仕入~返品))を考慮すると、百貨店の商品原価は20%程度。そこに、売れ残った商品の評価損やバーゲンのディスカウントを加えると原価は40%に跳ね上がり、家賃と合わせると80%近くのコストになる。さらに人件費や物流費などを加えると「全く利益が出ない」商売になってしまうのだ。

これに対してユニクロの原価率は45%。原価2000円の商品なら、約4000円で売ることができる。驚くことに「ユニクロで4000円の商品」と「百貨店で1万円の商品」は、物理価値がほぼ同一なのだ。これでは目の肥えた消費者に受け入れられるはずもない。

百貨店関係者からは、時折こんな声も聞こえてくる。「ユニクロなどの低価格商品だけでは消費者は満足しない。いつか高価格品が売れる時代がくるだろう」と。

しかし彼らは、消費者の可処分所得の変化やユニクロの商品の品質を調べたこともなく、自社の損益分岐点を超える小売価格の商品を高額商品と呼ぶにとどまっている。当然ながら、高い商品と良い商品は全く違うものだ。贅肉だらけのコスト構造から生まれる高額商品など、消費者の支持を受けることはできないのである。

一方、GMSには他の業態にない強みがある。第一が、商品を大量に低価格で一括調達し、可能な限り低価格で販売するというビジネスモデルと、徹底したローコストオペレーションだ。

第二が、消費者の生活との密着度だ。消費者の生活圏に店舗を構え、商圏内の人たちにとって、その店を訪れることが1日のスケジュールに組み込まれている。これは他の衣料品店にない優位性だ。これらの強みを活かせず再生に苦戦しているのは、GMSが自らの存在意義を錯覚しているからである。

GMSの存在意義とは、「人々の生活を支える店」である。そもそも消費者はGMSの衣料品に高感度な商品など期待していない。ベーシックで、現在持っている商品にコーディネートでき、少し新しく見えるファッションであればいいのだ。

にもかかわらず、各社はテレビCMに女優を起用してイメージアップを狙ったり、海外ブランドを投入したりしている。しかし、これらの施策が業績向上に貢献したという話は聞かない。理由は簡単で、消費者は起用されている女優が実際にGMSの服を着ているとは思っていないからだ。表面的なイメージを取り繕うだけでは消費者に共感は生まれず、購買につながらない。