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図1:企業と消費者の関係が変わった!

図1で示したように、かつては企業が商品を消費者に押し付ける一方的な関係でした。これが双方向の関係に変化したところまでは一般に理解されていますが、SNS時代、実態は図1の下図のようになっています。ソーシャルメディアでつながった消費者が情報を発信し合い、企業の与り知らないところで商品の価値やブランドイメージが形成されていく。

インターネットマーケティングに携わって20年以上が経ちますが、ひと昔前は「ネットの情報なんてワン・オブ・ゼム。書いているのは偏った人たちだから意味がない」と批判する人が大勢いました。しかしいま、ブログなどのCGM(コンシューマー・ジェネレイテッド・メディア=消費者がつくるメディア)は消費者に大きな影響を与えています。アメリカでは商品カテゴリーごとにアルファブロガー(影響力のあるブログ著者)がいて、その言動によって消費が動くほどです。

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図2:SNS時代は「人のうわさは2日」

マーケティングの目的はクチコミを起こすことといっても過言ではありません。ただ、かつては「人の噂も75日」といわれ、噂は一定期間続くものと考えられていました。いまでは図2が示すように、企業側が話題を提供しても1つのネタをもとに消費者がブログに書き込む量は、その話題が提供された2日後には減少してしまいます。クチコミを起こしたところで、それをいかに持続させヒットに結びつけられるかが問題なのです。

CGMの1つであるブログを分析することでクチコミを可視化し、マーケティングに活かすことはできないか――。そう考えて研究を始めました。そして石井晃教授との共同研究で「ヒット現象の数理モデル」が生まれ、ヒットづくりの考え方や、その原則を数式化するところまで辿り着きました。

クチコミの盛り上がり方を含めてヒットが起きるまでの道筋を数字で導き出すことができれば、効果的な広告・宣伝のタイミングを知り、費用を見積もることが可能となります。

ヒットコンテンツ研究所社長 吉田就彦
1957年生まれ。早稲田大学理工学部卒。キャニオンレコード(現ポニーキャニオン)に入社し、「だんご3兄弟」等数々のヒットを手がける。デジタルガレージ副社長を経て現職。デジタルハリウッド大学院教授、コンテンツ学会理事等も兼務。
(構成=小川 剛 撮影=市来朋久)
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