「DISる」よりも問題解決の解を提示

【田原】他のNPOや企業にやってもらうって、フローレンスのチェーンにするのではないわけ?

【駒崎】そういう考えはないですね。

【田原】なぜ? やれば儲かるのに。

【駒崎】僕らが発展するだけでは意味がないのです。僕らは今、「おうち保育園」を9園やっていますが、それが20園、30園になっても、待機児童問題は解決しません。待機児童を減らすには何千という園が必要で、そのためにはいろいろな参入プレーヤーが入ってきて、業界全体で発展していったほうがいい。

【田原】一般的に、人間は欲を持っていますよね。金銭欲に始まって、名誉欲、や権力欲。駒崎さんの欲って何ですか。

【駒崎】感謝欲だと思います。感謝されるのが本当に気持ちよくて。たとえば病児保育をやっていると、「これがあったおかげで3人目の子どもを産もうと思った」と言ってもらえることがあります。ベタですけど、そういう声を聞くと、やっていてよかったなあと。

【田原】駒崎さんの世代は、社会をよくしたいという思いから社会起業した人が多いですね。でも40代以上の社会起業家は少ない。どうして今の若い人は社会起業をやるのかな?

【駒崎】僕らの世代は、批判のことを「DIS(ディス)る」といっています。DISはラップ文化の1つですが、僕らの世代は社会をDISることに限界を感じているんです。

タイタニック号が今まさに沈没しようとしているときに、「船長、ダメじゃん」とDISっても、何にもならないですよね。だとしたら、もう自分たちで穴をふさぐしかない。DISるのは後でもできるから、とりあえず板とトンカチ持とうぜ、という気持ちで社会起業する人が多いのだと思います。

【田原】そうか、今まではDISることばかりやってきたもんね。野党もしかり、新聞もしかり。

【駒崎】昔はそれでもよかったと思います。力強い体制が悪いことをしていて、その悪に対して正義の市民が火炎瓶を投げるという構図がありましたから。でも、今は悪がいないじゃないですか。僕は2010年から半年間、政治的任用ということで民間人ながら半年間内閣府の官僚をやったのですが、鳩山元総理を含めて、悪の権化みたいな政治家や官僚に出会うことはありませんでした。DISるより僕たちで解を見つけて提示していくほうが、問題を生んでいる構造を早く動かせます。