業界全体で発展すべきだ

【田原】駒崎さんがすごいのはフローレンスだけでなく、どんどん手を広げているところだと思う。今はどんなことをやっていますか。

【駒崎】今取り組んでいるのは小規模保育です。今、待機児童は、潜在待機児を含むと85万~100万人います。原因の1つが、20人以上でないと保育園をつくれないという規制です。街には空き家がたくさんあるのだから、規制緩和して小規模保育できるようにすれば、待機児童は減らせるはず。そこでまずマイクロ保育園モデルとして、マンションや一軒家を使った「おうち保育園」を始めました。

【田原】でも、その保育園は規制にひっかかるわけですよね?

【駒崎】普通にやったら公認されないので、当時の鳩山由紀夫内閣の官房副長官である松井孝治さんから厚労省に働きかけてもらい、実験事業としてやらせてもらいました。現場にたくさんの政治家や役人に来てもらって、「うまくいくでしょう。何も問題ないですよね」と見せたら、ちょうど待機児童対策チームにいた村木さんが「いいですね」と言ってくださって。

【田原】村木さんって、間違って一度逮捕されたけど、検察のインチキがバレて無罪になった村木厚子さん?

【駒崎】はい、村木さんの復帰先が待機児童対策チームでした。村木さんが僕たちのモデルを評価してくれて、小規模保育を法案の中に入れ込むことになりました。去年、法案は通りました。

【田原】そのころは民主党内閣で、衆議院は民主党が取っていた。けれど、参議院は野党のほうが多かった。ねじれ国会の中で、よく通しましたね。

【駒崎】自民党にはめちゃくちゃ反対されました。あのころ自民党は倒閣モードに入っていましたから。でも、この問題は党利党略を超えて与野党で合意してもらわないといけない。そこで公明党の議員をはじめ、お願いにあがりまくったら、自民党の中にも良心を持った方がいらして、最終的に法案を通すことができました。15年からは小規模認可保育園が全国でつくれるようになりました。

今は自治体から補助が出るのですが、国の消費税財源からお金が出るようになるので、全国のNPOや企業も小規模保育園をつくりやすくなります。これで待機児童問題は大きく前進します。