ロシアが欲しがる北朝鮮の労働力

北朝鮮に熱視線を送っている国はほかにもある。ロシアだ。

ロシアのセルゲイ・ラブロブ外相と中国の王毅外相。北朝鮮情勢も協議された。(AFLO=写真)

ロシアの最大の悩みの1つは、極東地域の人手が足りないことだ。シベリア開発はプーチン政権の目玉商品で、ウラジオストクにパイプラインや石油基地を造ったり、ウラジオやハバロフスクに高速道路を敷こうとしているが、労働力人口が圧倒的に足りないのだ。

極東ロシアは厳しい生活環境と経済発展の遅れから人口がどんどん減っているが、逆に国境の向こうの中国の吉林省、遼寧省、黒竜江省の東北三省だけで1億人以上の中国人が存在している。これはロシアにとっては大変な恐怖で、人口のアンバランスから実質的に中国の経済圏に取り込まれる地域も出てきている。ロシア人が手放した農地などは、中国人がどんどんレンタルして、実質的な中国の支配が進んでいるのだ。

人手が足りないからといって中国人に頼れば、庇を貸して母屋を取られるようなことになりかねない。

そこでロシアが欲しがっているのが北朝鮮の労働力だ。北朝鮮の資源、石炭や鉄鉱石などは自国に掃いて捨てるほどあるから必要ないし、今さら南下政策で朝鮮半島に食い込む気もない。欲しいのは悪条件でも勤勉に働く、何より中国人のような恐怖感を与えない北朝鮮の労働力である。

もし北朝鮮が解放されたら、ロシアは北朝鮮の労働力獲得に乗り出そうとするだろう。ただし、かつてのロマノフ王朝やスターリンのようにロシア西部からシベリアに強制的に移住させるわけにはいかないから、優遇策で北朝鮮の人たちを呼び込むかもしれない。

アメリカはどうか。ブッシュ政権時代に名指しした「悪の枢軸」の1つである北朝鮮が制御不能と判断すれば、潰すことに躊躇はない。もし北朝鮮がミサイルの発射ボタンを押せば、アメリカは金正恩の居場所を常につかんでいるため、サダム・フセインを追い込んだバンカーバスター(地中貫通爆弾)を使って、地下までピンポイント攻撃するだろう。