ノンフィクション20作品一覧

■「死の医学」への序章 柳田邦男著、新潮文庫
精神科医・西川喜作氏がガンを患いながらも、「死の医学」を実践した2年7カ月の闘病の記録。死を見つめることで、残された人生をいかに深く生きることができるか。日本人の死生観の転換期が浮かび上がる。

■滄海よ眠れ 全3巻 澤地久枝著、文春文庫
日本海軍が敗北を喫し、日米戦の転換点となったミッドウェー海戦。その日米双方の戦死者、遺族への全調査によって、戦争がもたらす人間ドラマの全貌を描き切った鎮魂の書。

■火花 髙山文彦著、角川文庫
23歳で世を去ったハンセン病の作家・北条民雄。刻々と深まる病と差別の中で、魂を削るように言葉を生み出し続けた作家の生涯は、絶望の淵で輝く命の本質を浮かび上がらせる。

■リターンマッチ 後藤正治著、文春文庫
ある定時制高校の教師がつくったボクシング部。そこでの日々を通して勝つことを学び、そして互いに人生を学んでいく生徒と教師の姿を、寄り添うように見つめた作品。

■イサム・ノグチ 上・下 ドウス昌代著、講談社文庫
ドウス昌代著、講談社文庫日米混血の彫刻家、イサム・ノグチの人生を、あらゆる関係者への取材から立体的に描く。数度の結婚生活の内実までを克明に明かしながら、巨匠の人間像を見据えた傑作評伝。

■たとえ病むとも 重兼芳子著、岩波現代文庫
ホスピスボランティアを通して、癌と闘う芥川賞作家は何を思索したか。生と死を見据える眼差しが胸に迫る。

■証言 水俣病 栗原 彬編、岩波新書
水俣病の現実を10人の患者があらためて語る。戦後社会の抱えた公害、薬害、事故などの原点が見えてくる1冊。

■苦海浄土 石牟礼道子著、講談社文庫
近年、全3部作が完結した著者のライフワーク。水俣病問題の本質を描き、世界文学の域に到達した渾身の作品。

■ドキュメント戦争広告代理店 高木 徹著、講談社文庫
ボスニア紛争の裏側で展開された国際宣伝戦の熾烈な姿を、NHKディレクターが明らかにしたルポルタージュ。

■収容所から来た遺書 辺見じゅん著、文春文庫
飢えと寒さの中でシベリア抑留者はどう生き、死んでいったのか。

■散るぞ悲しき 梯 久美子著、新潮文庫
硫黄島に散った栗林忠道が残した家族への手紙。妻子への細やかな心遣いが、この軍人の知られざる知性を明かす。

■もの食う人びと 辺見 庸著、角川文庫
貧困から刑務所まで、世界の様々な現場を歩き、「食う」姿の素描を集積して、人間の本性を浮き彫りに。

■敗れざる者たち 沢木耕太郎、文春文庫
栄光の座を極める一歩手前で挫折したスポーツ選手たちのその後を描いた「悲しき人間のバラード集」。

■こんな夜更けにバナナかよ 渡辺一史著、北海道新聞社
筋ジストロフィー患者の自立支援にかかわったボランティアが、逆に学んだ「生きるとは」。

■病院で死ぬということ 山崎章郎著、文春文庫
死を間近にした人を救うとはどのようなことなのか。医療者の立場から現代医療の抱える矛盾を告発する。

■ぼくもいくさに征くのだけれど 稲泉 連著、中公文庫
太平洋戦争で戦死した詩人・竹内浩三。その短い生涯と戦後に詩を伝えた人々の物語を、戦後世代の新鮮な目で描く。

■朽ちていった命 NHK「東海村臨界事故」取材班、新潮文庫
1999年に起こった東海村臨界事故。放射線がいかに人体を蝕んでいくか、その恐るべき実態を克明に記録した貴重なルポルタージュ作品。

■なぜ君は絶望と闘えたのか 門田隆将著、新潮社
光市母子殺害事件の9年間を追う。死刑判決の翌日、著者は死刑囚と面接し、その内面を語る言葉を引き出す。

■藤田嗣治「異邦人」の生涯 近藤史人著、講談社文庫
画家・藤田嗣治の実像を妻への取材や新資料から描き出す。誤解多き評価に対し、真実の藤田像を再構築した。

■五衰の人 徳岡孝夫著、文春文庫
割腹自殺の日に三島由紀夫から檄文の遺書を受け取った記者が描いた、もう一つの三島像。枯れた文体の味。

(構成=稲泉 連 撮影=若杉憲司)