就活意識についても、一言では語れなくなっている。メディアの取材で「最近の学生はどんな傾向ですか?」と聞かれることがあるのだが、これも1つの「傾向」などなく、様々なセグメントに分かれている。1つには確かに保守化の傾向があるのは事実で、外資系コンサルや投資銀行の内定辞退率が今年は高いそうで、その分、商社や日銀に流れたとも聞いている。その一方で、スタートアップや売上10億円にも満たない会社に東大生、京大生が就職を決めた話もよく聞いている。良くも悪くも、会社としてのポジショニングがハッキリしているところに学生が魅力を感じるようになっているということであろう。その一方で、面接がすごく上手で、各会社の要求イメージに合わせて「自分を作った」ら、ありとあらゆる関連のなさそうな企業の内定を一通り揃えた後、自分の行きたいところがわからなくなってしまったという、「就活が終わってからの自分探し」という学生もいる。また逆に、いわゆる「コミュ力」不足で、多分、どこにも就職が決まらなさそうな学生もいる。私が中心的に見ている、東大、京大、早稲田、慶応レベルでもこれくらい多様なのだから、より範囲を広げれば、より様々なパターンがあるだろう。こういう状況で、「最近の学生は」と一律に語れる評論家がいたら、私にはとても不思議な存在である。

就活のパターンについても、様々である。就活サイトに登録して、志望企業にエントリーする、というのは、「第二陣」の就活であり、「第一陣」の学生はその遙か前から、企業の情報を集めたり、企業に接触したりしている。私は東大と京大で公開企業を投資家視点で分析する自主ゼミを開いているのだが、そこでは企業が作りたいイメージと財務諸表が語る企業の実態がよく話題にのぼる。こうした活動をしている学生は企業が作りたがっている「企業イメージ」には決して左右されない。

以上からも、就活を語るにも実際にはいろいろな実態があり、いろいろな視点があることを実感頂けたと思う。このコラムでは、今後も、一面的になりがちなニュースに関して多様な視点を提供していきたいと考える。

※1:投票者1名が最大5票を有し、志望企業を1位から5位まで選択する形式。調査期間は2012年12月1日から13年1月14日。回答数は14084(うち男子6556、女子7528/文系10696、理系3388)、総得票数は54388票。
※2:2012年は12月1日に就職活動が「解禁」となり、大手就活サイトがオープン。稼働初日にアクセスが殺到し、繋がりづらくなった。

京都大学客員准教授、エンジェル投資家 瀧本哲史
東京大学法学部卒業。東京大学大学院法学政治学研究科助手を経て、マッキンゼー&カンパニーへ。主にエレクトロニクス業界のコンサルティングに従事する。3年の勤務を経て投資家として独立。著書に『僕は君たちに武器を配りたい』『武器としての決断思考』などがある。
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