「共働き夫婦が子供を私立に入れるのって、おかしいことなんでしょうか?」

中川亜紀さん(36歳・仮名・以下同じ)は、少々苛立たしげな表情を浮かべながらいきなりこう切り出した。

中川家は3人家族。夫の道治さん(38歳)の年収は約800万円、食品メーカーで研究員を務める亜紀さんの年収は700万円。世帯年収は1500万円であり、子供を私学に通わせる余裕は十分にある。

そこで亜紀さんは、かわいい一人息子を私立の小学校に通わせようと考えたのだが、義理の母親に待ったをかけられたというのである。

「お義母さんたら、私立の小学校はお金持ちの子たちが通うところだから、共働き夫婦が通わせたら子供が惨めだなんておっしゃるんですよ」

実を言うと、家計相談に来られる方の「教育プラン」はここ数年の間に激変している。

2006年から08年にかけては、いわば“私立バブル”の時代だった。所得格差の拡大と、それに伴う公立校の低迷ぶりが吹聴されたことで、大半は中学からなのだが、多少無理をしてでも子供を私立に入れたいという相談者が、この時期、急激に増えたのである。

現状の収入では難しいと指摘しても、決まって奥さんが「私がパートに出るから」とおっしゃる。たしかに子供が1人だけなら、パートで年間100万円稼げばなんとかならなくもない。そこまでして子供を私立に通わせたいというムードが、この時期にはあったのだ。

ところが私立バブルは、08年9月に起きたリーマン・ショックによって、完全に終息することになる。