一貫性の原理を使う

心理学的に、人間は一般的に「イエス」と答えざるをえない質問を繰り返されると、肯定的な心の構えができる傾向にある。イエス、イエスと言っていたことに対して「一貫したい」心理が働くからだ。

ゴア氏のつかみは観客に自分を受け入れてもらうことで、聞き手を「イエス」の心理状態に持ち込んでいる。ある事項に対して何度も同意していると反論しにくくなると考えれば、相手を受け入れる「イエス」の話が続いた中で、その人物の話に「ノー」とはいいにくいだろう。

話を始める、プレゼンをするときの“つかみ”に、ゴア氏ほどの時間をとるのは一般の私たちにはハードルが高そうだ。しかし、まずは相手の気持ちを肯定に導いてから本題に入ることは、決して時間の無駄ではない。

個人対個人のときには、相手にまつわる話や興味を引く話で始めると、無駄話ととられずに受け入れてもらいやすい。あるいは、業績アップなど“相手が話したいこと”を聞いて話してもらうのもいいかもしれない。聞き手は、自分にまつわる肯定に「好感」を抱きやすく、結果として相手を肯定的に受け入れやすくなるものだ。

こうしてまずは聞き手の好感を得ることから始めて、相手と同調し、肯定の意識を導き出そう。これで、そこから始まる話の内容についても肯定を導きやすくなるのである。

[参考資料]
*Dale Carnegie, [1991]The Quick and Easy Way to Effective Speaking, Reissue,.
『心を動かす話し方』(デール・カーネギー著、山本悠紀子監修、田中融二訳 2006年 ダイヤモンド社)

【関連記事】
「自分ごと」に置き換えながら聞かせるテクニック
社交不安障害 -プレゼンで緊張するのはなぜか?
話の輪郭をハッキリさせる「3ポイントルール」
要点を絞り込み「知性」よりも「感情」に訴えかけよ
情報は「イメージ化」して見せると効果大