どんな企業も、創業時は経営者、顧客、現場の距離はきわめて近いが、成長にともなって組織の規模が大きくなると、この距離がひらいてムダな仕組み、会議、調査がはびこる。迷走企業がまず取り戻すべきは「創業者目線」である。

20年以上をかけた膨大な調査から導き出された結論

会社はつくるより続けるほうが難しい。さらに言えば、現状維持よりも難しいのが安定成長である。では、不断に成長し続けられる優良企業の条件は何だろうか。

ある人は絶えざる新市場への進出、新商品の導入が鍵を握ると言い、またある人は継続的な破壊と創造が必要だと言うかもしれない。別の人は効果的なM&Aが必須と主張し、そんな問いに答えるのは不可能だ、と最初から匙を投げる人もいるかもしれない。

私に言わせれば、それらの答えはいずれも正しくない。

結論から言えば、「再現可能な不朽のビジネスモデル」を持ち、日々それを切磋琢磨している企業こそが、安定的な高成長を遂げることができる。

単純な結論ではあるが、その背後には膨大な裏づけの調査が存在している。私の同僚でもある、世界有数の戦略コンサルティングファーム、ベイン・アンド・カンパニーでグローバル戦略プラクティスを率いる2人のパートナーが、20年以上をかけ、新興国と成熟市場を含む主要12カ国の5000社以上を対象とした分析や、経営陣への取材を含む30件のケーススタディなどをもとに導き出した結論であり、その内容は昨年日本語訳も出た『Repeatability リピータビリティ』にまとめられている。

「再現可能な不朽のビジネスモデル」は具体的には次の三原則から成る。

(1)明確に差別化された「強力なコア事業」を持つこと
(2)戦略や価値観を現場に腹落ちさせ、実行させるための「譲れない一線」があること
(3)顧客や市場の変化を敏感に察知し、継続学習や改善を促す「循環型学習システム」を備えていること