「大前塾長は日立製作所時代、亡くなった私の祖父、綿森力(元日立製作所副社長)の部下だった。そう聞いてからずっと気になっていたんです。どういう考え方でコンサルティングをされているのか、詳しく知りたいと思いました」

大前経営塾は、(1)現代の経営戦略、(2)新しい能力を身につける、(3)Real Time Online Case Study(RTOCS)、(4)経営者講義、(5)「大前研一ライブ」の5科目で構成され、毎月科目ごとにテーマが設定されている。なお、大前研一ライブとは時事問題について大前塾長が企業経営の観点から解説するもので、RTOCSは毎週1社を取り上げ、自分がその企業の経営者になったらと仮定し、どういう戦略をとるかを考える講座である。教材はネットを通じて配信される講義映像のほか、大量の書籍が指定される。それらの教材をベースにネット上でディスカッションが行われ、毎月出される課題と、小論文の提出をもって修了となる。

森社長は講義映像をスマートフォンにダウンロードし、仕事の合間や週末のすき間時間を使い、再生速度を1.6倍にして視聴している。また、塾生は通常の講義以外にも過去使用された講義映像の学習も可能である。そこで森社長は大前塾長の過去の講義も閲覧しているが「数が多くて全部聞ききれない」。

そうやって学習した成果は、経営者としての思考や判断に反映されている。

「IT業界は3年後すら見通せません。一方で優良企業といわれた大企業がどんどん傾いている現状を見ると『明日はわが身では……』との危機感もあります。その中で経営者が頼みにするものは自分の感覚であり、感覚を裏付ける根拠が絶対に必要です。私にとってはそれが大前先生の講義で、『こういう方向性や考え方をとっていれば大丈夫』という支えになっています」

フォーカスシステムズ 代表取締役社長 森 啓一
1963年、茨城県出身。慶應義塾大学商学部卒。監査法人、税理士事務所を経て、2011年より現職。