価値の再編集などを意味する「キュレーション」というアメリカ生まれの概念が、ビジネス界で注目されている。総合デザインに佐藤可士和氏を迎えた新生セブン-イレブンを例に、この新時代の発想法を追った。

ブランドの価値をきちんと「整理」し、的確なコミュニケーションで伝える

ビジネスのあり方や本質を問い直し、提供すべきコンテンツを選択し絞り込む。ただ、それだけでは顧客に新しい意味や価値はなかなか伝わらない。キュレーションで難しいのは、それぞれのコンテンツを結びつけ、1つのブランドとして価値を表現する伝え方だ。

商品ロゴやパッケージのデザインを担当した佐藤可士和氏。

セブン-イレブンの場合、日本で最も活躍するクリエーティブディレクターの1人、佐藤可士和氏とタッグを組むことで、この問題の打開策を図った。おにぎりや弁当、パン、惣菜などのオリジナル商品を全面リニューアルするとともに、従来バラバラだった商品のロゴやパッケージデザインを佐藤氏の力を借りて統一する。売り場全体でブランド価値を再構築し、顧客に再認識してもらうブランディングプロジェクトを1年がかりで進めたのだ。

グループの広報誌上で佐藤氏と対談した縁で、プロジェクトへの協力を求めた鈴木敏文氏がいきさつを話す。

「私は、小売業にとって、新しいものを生み出すと同時に、新しさをいかに伝えていくか、コミュニケーションが非常に重要だと考えていました。ところが、アピールの仕方に全体感がなく、単発に終わっていて、なかなかブランドの価値が伝わらない。日ごろの問題意識をお話しすると、佐藤さんも同じ考えを持っておられた。そこでセブン-イレブンを進化させるため、力を貸してほしいとお願いしたのです。

2人だけで何回も話し合い、私の信念をすべてお話ししました。ロゴやデザインを具現化するため、社長以下、現場部隊も入ったミーティングは1年間で30回を超えました」