流行に敏感な層にバカウケした!

 時速250キロの猛スピードで夜のドイツ・アウトバーンを駆け抜ける高級車。遥か後方にいてもそれとわかる、ヘッドライト下のLEDランプの存在感。前方のクルマはバックミラーで一瞥するや「あっ、やばい」とサッと道を譲るという。

アウディ、VWグループの躍進!
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アウディ、VWグループの躍進!

そのクルマとは、優れた高速性能と独特のデザインで世界的に(特にクリエーターなど最先端の流行に敏感な層に)人気を集めているアウディだ。日本で高級輸入車はメルセデスとBMWの二強のイメージが強いが、西ヨーロッパ市場のシェアは、アウディ4.8%、メルセデス4.9%、BMW4.9%で、3社が台数的にも拮抗している。

そのアウディが、ライバルの苦境を横目に日本でも海外でも絶好調だ。15年連続成長で、昨年は販売台数が前年比4.1%増と100万台を初めて突破し、売り上げ1.7%増、税引前利益9%増だ。金融危機前に掲げた2015年150万台達成の目標も維持している。

かつて日本ではヤナセによる販売ルートが中心だったため、「お父様のベンツ、奥様・お嬢様の赤いアウディ」という営業イメージが定着し、それがアウディの足かせでもあった。歪んだ国内イメージを覆そうと、00年にアウディ専門店を一からつくり上げ、現在国内に約100店ある。このブランドイメージづくりが奏功し、加速性能や最大トルク、燃費、CO2排出量など性能面でもドイツのライバル車を上回る車種を次々に投入して販売台数を積み上げ、シェアをさらに1.4ポイント高めた。

アウディジャパンの小島誠広報部長は「以前は、アウディがダメでも日本では著名な別ブランドのクルマを提案すればよかった。現在はアウディ専門なので、セールスも逃げ道がなくなり、アウディの凄さを顧客にPRするようになった。矢継ぎ早に新モデルを市場投入したこともあり、従来のアウディ購買層とは全く違う客層が来店している」という。

こうした努力が実り、国内のアウディ店舗は来店者数が20%アップしている。メルセデスやBMWと乗り比べの対象として認知され始めたことも躍進の背景にある。

時代にマッチしたデザインも人気の理由で、アウディの日本人デザイナー、ワダサトシ氏が社内コンペに勝ち抜いて現行モデルのうち2つをデザインしている。デザインの良さもあって、ドイツの自動車専門誌による調査ではBMW、メルセデスを抑えて2年連続でブランドイメージのトップに輝いている。

富裕層を刺激。日本人デザイナーの大活躍
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富裕層を刺激。日本人デザイナーの大活躍

自動車業界に詳しい長谷川洋三・帝京大学教授は「アウディを含むフォルクスワーゲン(VW)グループは、米市場への参戦を後回しにし、中国など新興市場に力を入れていた。折しも米経済の悪化で米市場頼みの他社は総崩れになったが、VWグループの傷は浅かった。そもそもアウディは技術レベルは高かったにもかかわらず、まじめに販売戦略を立ててこなかった。ここ10年で販売網を整備し、新モデルの市場投入を行った結果、『そういえばアウディもあったな』という物珍しさも手伝って、花開いた」と解説する。

さらに長谷川教授は「ビッグスリー時代が終わり“2.5強”時代が来る。トヨタとVWグループに、米3社まとめて『0.5』で合わせて2.5強。当然、VWグループの稼ぎ頭であるアウディの重要性はぐっと高まる。今年は米市場でどこまで食い込めるか。体制固めの年となる」。