健康づくりの
ソリューションを提供する

健康と一口に言っても、その対象は幅広い。花王のヘルスケア食品事業は立ち上げ当初から、一貫して「肥満の解消」をターゲットの1つとしてきた。

「運動不足やバランスの悪い食事など、生活習慣の乱れが積み重なって肥満となり、それが糖尿病や高血圧などを引き起こすことがある。つまり現代人の健康を阻害している大きな要因である肥満を予防することが重要です。慶應義塾大学の伊藤裕教授は、生活習慣の乱れが重篤な症状を引き起こす連鎖を『メタボリックドミノ』と呼んでいます。治療ではなく予防の観点からこのドミノ倒しを止めることが、私たちが取り組むべき大きな課題なのです」と安川氏は言う。

健康づくりに向けた花王の事業展開は、単なる商品提供にとどまらない。例えばヘルシアを飲み始めた人が、それをきっかけにいつもより1つ先の駅まで歩いてみたり、夜の間食をやめたりと、健全な生活習慣を始められるように、商品とあわせた情報提供を積極的に行う。

「ヘルシアを飲む習慣が、生活全体を見直すきっかけとなり、ひいては生活習慣病を予防するサイクルを生み出せれば理想的です。商品を通じて健康づくりの"ソリューション"を提供する。これが、生活に根ざした企業である花王の使命です」

研究開発の段階から
マーケティングが始まっている

「来るべき超高齢化社会を、誰もが健康で長生きできるアクティブシニア社会とするために、花王のヘルスケア事業は今後ますます重要となるでしょう」と安川氏。「ヘルシアシリーズは、その実現に向けたキーとなる商品の1つ。研究開発には相応の時間がかかりましたが、今回ようやく形にすることができました」

安川氏自身、30年近く研究畑を歩んできた。入社早々に家庭用食品を開発するプロジェクトに配属されると、調理油やマーガリンなどの開発を経て、現在のヘルスケア食品事業の基礎を築いた。

長く研究開発に携わってきた経験から、花王のものづくりについて「自らの発見がどう世の中に役立つかを常に考えている。研究段階から、すでにマーケティングが始まっているのが特徴です」と語る。

「ヘルシアのケースでも、まずは有効機能の発見があり、それが製品化に結びつきました。世界で古くから飲まれているお茶やコーヒーには、何か身体に良い影響をもたらす科学的な仕組みがあるはずだ。その仮説に基づいた研究の結果、茶カテキンやコーヒークロロゲン酸の有効機能を発見することができたのです」

機能とおいしさを両立させる研究には困難も多かった。しかし安川氏は言う。

「新しい技術や成分を発見し、どこにもなかった価値を生み出して社会に貢献していく。これが、研究開発の醍醐味です。今回、このプロジェクトで製品化に欠かせない画期的な発見をした研究員の目の輝きを、私は一生忘れないでしょう。開発にかけた時間と情熱が、1本の缶コーヒーに凝縮されています」

そのうえで安川氏は、「独りよがりな製品づくりになっては意味がない」と、今後のマーケティングの重要性を強調する。

「より良いライフスタイルを普及させられてようやく、社会に役立つ商品を提供できたといえます。開発部門と事業部門が一体となった花王のトータルマーケティングで、腰をすえて現代人の生活習慣の改善に取り組んでいきたいですね」

数ある缶コーヒーのなかで、これまでにないコンセプトを提案するヘルシアコーヒー。まずは1杯、試してみる価値がありそうだ。