G8からG20へ。世界の枠組みは変わるのか

オバマ第44代アメリカ大統領の手腕が問われる。
オバマ第44代アメリカ大統領の手腕が問われる。

面白い数字があります。07年に世界経済は4.4%成長しましたが、ちょうど半分である2.2%はBRICsによってもたらされました。これに対して、日米欧の先進国がもたらした成長は、1%分でしかありません。

やや大胆な予測になりますが、09年にイタリアで開かれるサミットは最後のG8サミットになるのではないかと思っています。

翌10年からは、従来のG8から新興国を加えたG20へ議論の中心が移るでしょう。やはり彼らの影響力を無視できなくなってきたのだと思います。

中国は11%成長から8%程度へ減速し、インド経済の成長も8.5%から6%くらいへ落ちています。しかし、それでも「成長している」ことが重要なのです。

では、いちばん気になる中国経済の先行きを予測してみましょう。中国は、こういう厳しい状況になっても7~8%の成長を維持すると思います。

そう考える理由は2つ。

1つは政治的な要請です。現在、中国では農村部から都市へ年間数千万人が流入しています。この人たちに就業機会を与えなければならず、それには7~8%の成長が必要です。

もし経済が失速したらどうなるでしょうか。中国では経済が悪化すると必ず党中央の権力闘争が勃発します。すると一方の「代理人」として、労働組合や市民団体、学生がデモを引き起こし社会が混乱します。89年の天安門事件も同じ構図で起きました。そうなると、政権が持ちません。

経済成長率7~8%というのは、現在の政権を安定的に維持するための要件なのです。

もう1つの理由は、中国の財政にそれだけの余力があるということです。たとえば日本の財政赤字は累積でGDP比150%に達していますが、中国は同20%以下なので、大幅に財政を拡大する余地があるのです。

温家宝首相はすでに計画を発表しています。それによると今後3年間でGDPの15%の財政拡大をするといいますから、単純に平均すると年5%。仮に乗数効果が1だとしても、成長率を5%も、かさ上げできることになるのです。(文中敬称略)

(面澤淳市=構成 尾崎三朗=撮影 AP Image=写真)