どの程度指導するか事前に決めておく

以前のメンタリング・モデルは一方通行だった。メンターが教えることに一方的に満足しているだけでは、きちんとした結果につながらない。新しいモデルは互恵的で、メンターと弟子、どちらの側も、それぞれ相手に教えられる知識を持っている。カミノ・マルコウィッツは、例を挙げてこれを説明する。

アジレント・テクノロジーズのヨーロッパ法人の有能なマネジャーが、アメリカ本社のCFOにメンターになってくれと言ってきた。CFOは同意したが、ヨーロッパでの事業に関する自分の知識の幅を広げてくれるなら、という交換条件が含まれていた。マネジャーはCFOをヨーロッパに招き、視察に随行するとともに、ヨーロッパでの事業についてより深い理解を与えてくれる人にCFOが会えるよう手配した。

「成功するメンタリング・ペアは、両者が互いにどの程度教え合うかを事前に取り決めていることがある」と、ニューヨーク市を本拠とするコンサルタント会社、ザ・クリサリス・グループの共同設立者、ドナ・フラッグは言う。「メンターと弟子は、お互いから最大限のものを引き出すため、たとえば自分たちの時間の80%を弟子に、20%をメンターに使うといったふうに、取り決めておいてもよい」。

不満があるときは率直に告げよう

あらゆるメンタリング関係で相性は重要なファクターとなる。経歴や経験や性格が似ていることは、私的な人間関係と同じく、最初に良好な関係を築くのに役立つ。一方で、メンタリング関係に双方が深くコミットすることで、つながりが生まれることがある。

それを実証するために、トラウトマンは、弟子が学ぶ必要のあることを、具体的なスキルや知識に落とすトレーニングを行うことを勧める。そうすることでメンターは、あいまいな表現でお茶を濁すのではなく、互いにはっきり理解できるスキルに集中するようになる。