25年近くも前の話だが、勤務していた企業で「まねっこ運動」というものが推奨された。顧客サービスで優れた取り組みをしている支店を他支店も見習い、水平展開しようというのである。しかし、この活動はあまり盛り上がらなかった。全国に散らばっている支店はそれぞれの地域特性を抱えているし、何より支店長のモチベーションが上がらない。ライバルの支店の施策を真似するなんて……。

模倣は決して簡単なものではなく、その成功には、やる気や戦略が必要だ。本書は、業界に君臨するリーダー企業の多くが模倣者としてスタートし、やがてイノベーターを凌駕した豊富な実例を挙げて、まずは読者を惹きつける。さらに生物学や哲学、芸術といった幅広い分野における模倣を再定義したうえで、経営学分野での成功のヒントを順次説いていく。

たとえば模倣をするタイミングについて、戦略上の選択肢は大きく3つあるという。すぐ後に続くファストセカンド(迅速な二番手)、強力な差別化要因を使って最初の模倣者の後を追うカム・フロム・ビハインド(後発追撃者)、イノベーターのノウハウを異なった市場に移植するパイオニアインポーター(先駆的移植者)。それぞれ一長一短があるが、自社の強みや市場環境等から綿密な見極めをしなければ成功する確率は低くなるだろう。

イノベーション信仰に繰り返し警鐘を鳴らしている点も本書の大きな特徴である。「最高のアイディアがすべて当社の研究開発担当者やマーケティング担当者によって発明されるわけではない」(P&G)という認識の徹底、模倣の心構えを万全にすることが成功の第一歩なのだ。

「対応づけ」の重要性も強調される。目に見えるモデルのシステムを自らの運動情報に翻訳するには、1つひとつの要素を分解して組み立て直すだけでは十分とはいえない。その根底にある意味をすくいあげ、解釈し直すことも必要だ。このように考えると、逆説的だが、模倣が非常に創造的な活動であることが理解できる。

本書は海賊版や偽造品の存在を議論に加えていないので、論点が拡散せず、焦点が絞られている。模倣対象は、製品、プロセス、慣行、ビジネスモデルで、そのまま丸ごと模倣するのも可。競争優位第一の考え方で、イノベーター側からの法的訴えはリスクと捉える。ここまで徹底するといっそ気持ちよいが、倫理的問題はどうなのかという読後感はやはり残った。イノベーション信奉者の価値観をオセロのようにひっくり返すまでには至らないとみる。

タイトルのコピーキャットは猿マネに近いニュアンスだが、本書の主題はあくまで創造的模倣である。その意味でキーワードはむしろイモベーション(イノベーションとイミテーションを合わせた監訳者の造語)のほうだ。ただ、この言葉、語感的に日本では流行りそうもないなあ。