松川さんは美容師を目指していたものの、体調を崩してしまい、その夢を断念せざるをえなくなった。

「知人の紹介で編集プロダクションでアルバイトをさせてもらっていたのですが、そこの派遣さんに『アルバイトより派遣のほうが時給がいいよ』と言われ、派遣で働くことに決めました」

31歳という年齢を考えると、「正社員になるなら今しかない?」と思い悩むこともある。しかし、妊娠したら会社を辞めてしまうことになるかもしれない。

「私は結婚していて家庭のこともあるから、残業がほとんどなくて、拘束時間がきちんと決まっている派遣のほうが合っているんだと思います」(松川さん)

働く女性にとって結婚や出産、子育てと仕事の両立は大きな課題だ。採用する側もおのずと敏感になってしまう。松川さんは言う。

「正社員の採用試験では、結婚しているだけで、面接で必ず『子どもはどうするんですか?』と聞かれます。『どうせ辞めちゃうんでしょ?』という感じで」

出産して子育てする権利は法律で定められている。たとえ派遣社員でも、一定の条件を満たせば、産休や育休も取得できる。しかし、実際のところ妊娠したら退職する人が大半だ。

「私の周りで産休を取った派遣なんて聞いたことがないし、もし取ったとしても、次の人をすぐに雇うでしょうから、同じ職場には戻れないかもしれません」

派遣という働き方に満足している松川さんだが、産休については少し不安そうな表情を浮かべる。

「働きたいときに働けるのがメリット」と語った藤田さんも、じわじわと年齢の壁を感じつつある。