藤田さんも同じような経験がある。

「会社に総務関係のソフトが導入されたとき、なぜか私に『全国に出張して各担当者に使い方を説明してきて』と言われました。そんなことをいきなり言われても困るし、かといって断ることもできず、いやいや行きましたけど……」

新入社員に手取り足取り仕事を教えるのは日常茶飯事。こちらが指示される立場のはずなのに、逆に正社員に教えなくてはならないことにストレスを感じる。またあるときは、顧客からのクレーム対応の矢面に立たされたこともあった。

「確かに電話を取るのは派遣の業務の1つですが、本来ならクレーム処理は正社員の仕事ですよね?」

と話す中村さんは、大手飲料メーカーを辞めるとき、同僚の1人に「え、派遣さんだったの? 今まで知らなかった!」と驚かれたという。

また、自分が頑張れば頑張るほど、正社員の存在が気になり始める。彼らと同じかそれ以上の仕事をしている自負はあるのに、そこには歴然とした格差が横たわっている。中村さんは言う。

「派遣はやっぱり立場が下なんですよね。例えば長く仕事をしていると、ここを改善したらいいのにと思うことが出てきます。でも、それを言える立場にないんです。言ったら言ったで『派遣は言われたことさえやればいい』と言い返されたり。その兼ね合いがすごく難しい」

また、中村さんは派遣社員への敵意をむき出しにした女性社員にも遭遇した。

「大きな会社では、『派遣の分際で』って口もきいてくれない女性社員の方もいらっしゃいましたね。自分たちの社内での立場が、優秀な派遣に脅かされるんじゃないかという気持ちもわからないでもないのですが、こちらの仕事へのモチベーションは確実に下がります」