日経が事実と異なる報道をしたときには、「日経がアサ芸になった」と発言し笑いをとったこともある(その割には、最近は日経にばかりよく出ている)。

鈴木修はコスト意識の高さでも知られる。ある部品会社を訪問したときのこと。敷地内の噴水を指して、

「この噴水の分、安くしてもらえますか」

とひと言。以来、鈴木が訪問するときは水が止められるようになったという。

海外でもオサム節は炸裂している。07年2月、ニューデリーにあるインド商工省。カマル・ナート商工大臣は、日本人の記者団にインドに投資する優位性を、得意そうに説明していた。すると、同席していた鈴木修は突如発言する。「高速道路と港湾を、早急に造っていただきたい。でないと、スズキは輸出ができなくなり、一番困るのはインド政府でしょ」。

虚をつかれたナート大臣は「次の予定があるので」と、退出してしまう。恫喝のようだが、「これでいいんだ。わかりやすくて楽だから。インドは直球が通じる。中国とは違う」。

そのインドに進出したのは83年だが、出資交渉で浜松にやって来たインド政府の官僚たちに言ったのが、次だ。

「日本では田舎の人間が一番信用できる。ただし田舎には金がない」

このようにして海外要人の心もつかんできたのだ。81歳となった今もその話術は衰えるところがない。

本社ビル(すごく古い3階建て)がある浜松市南区高塚町はいま、鳥取砂丘のような砂漠化が進んでいる。

「これがホントの砂上の楼閣だ」

震災後の会見ではそのように発言して笑いをとり、現在、防災対応を急いでいる。