経営でも時の利というものがある。自分の手だけを眺めていても時の利は見えてこない。ライバルが何をやっているのか、市場の流れはどうか、マクロ経済はどうなっているのか――。いろいろな要素を総合的にとらえたとき、時の利、地の利がわがほうにあるかどうかが見えてくる。わがほうにありと判断すれば、経営者として無理してでも勝負に出るべきだし、逆風なら我慢の時期だ。

ただし、時の利、地の利だけでは勝てない。日々の地道な努力があってこそだ。試験のヤマを張るのが得意な人でも、授業にまったく出ていなければ、勘の働かせようがないのと同じだ。時間の無駄を省くということは、単純に仕事をすぐやるかどうかではなく、今やるべきタイミングかどうか、今やることで最大の効果が得られるかどうかを見極めることなのである。以前、優先事項をのんびりやっている部下の姿にいても立ってもいられず、「俺がやってあげるから」と、仕事を取ってしまったこともある(笑)。

時間の無駄が出やすい典型は会議だ。例えば紙に書いてあることをわざわざ読み上げる必要はない。むしろディスカッションや質疑応答に時間を充てて、本質に迫れるような場にすべきだ。

私は、若い頃から物事を決めない会議には出なかった。資料をもらえば済むからだ。情報をシェアするために、わざわざ大人数が集まるのはバカらしい。しかも、最後まで一言も発言しない人がいると、何のための会議か疑問に思う。

また「情報の価値」にも敏感になるべきだ。意思決定に何ら影響を与えないような情報は、価値が低い。そんな情報をシェアするために、わざわざ時間を使って集まり、重要な意思決定のタイミングを遅らせることは罪だ。情報はある一定の量を超えると、限界効用が逓減し、意思決定の品質があまり向上しなくなる。それ以上、会議をやっても情報を集めても、意思決定の質が上がるわけではないから、時間の無駄なのだ。