軌道計算を担当した吉川真・宇宙情報・エネルギー工学研究系准教授は、「はやぶさ」プロジェクトがそれでも最終的に成功した要因をこう指摘する。

宇宙情報・エネルギー工学研究系准教授 吉川 真氏

「プロジェクトチームは非常にモチベーションの高い人たちの集まり。しかし最先端の研究者が集まると、各々が自分の分野ばかりに集中して、全体がばらばらになってしまう恐れもある。その意味で今回の成功は、個人がレベルの高い研究をしながら、同時にチームとしてもまとまっていたところにありました」

プロジェクトには18の専門グループがあり、ミッション期間中には各分野の研究者50人が働いていた。彼らは専門分野だけではなく、運用室での日々の作業など、自分たちの研究とは直接関係のない地道な仕事をそれぞれ持ち回りでこなしていった。そんななか、全く異なる研究対象を持つグループ同士の気持ちが最後まで繋がっていたのは、川口プロジェクトマネージャーの存在も大きかったと久保田教授は指摘する。

「音信不通になって2、3日後、朝のミーティングで、川口先生は『はやぶさ』にコマンドが届き、1年以内に電源をオンできる可能性が6~7割あるという計算結果を発表したんです。チームが絶望しそうになっていた時、すぐに可能性を計算してくれたことで、まだ希望はあるんだと思い直しました。論理的に確率があるなら、諦めるわけにはいかない、と」

それに――と彼は続ける。

「機体に搭載された機器には、多くの中小メーカーの技術が込められていました。構想、開発、運用までメーカーと大学の研究者と宇宙研が一体になってやってきたのが、『はやぶさ』というプロジェクトだったわけです。日本の技術の総力を結集したからには、1つでも望みがあるなら、それに僕らは懸けなければならない」

通信機が壊れていなければ、いずれ機体が回転し、太陽電池パネルが太陽の方向を向く。そうすれば電源が復旧し、電波が発せられる。その可能性を示す川口教授の言葉を聞きながら、久保田教授は「結束があらためて固まるのを感じた」と言う。