直感力を磨く鍵は「現場主義」にあり

ダイキン工業会長兼CEO 
井上礼之氏

世界経済が先進国から新興国主導になり、かつての成功体験が通用しない時代になりました。たとえばルームエアコンを主力商品の1つとする我々の電機業界でいえば、高付加価値、高機能、高品質な商品を高価格で先進国に販売していたのに、これからは新興国のボリュームゾーンを攻める方向にシフトしなければならなくなりました。

新興国のボリュームゾーンとは、日本円で年収50万~350万円の層で、商品に対する要求も国によって違います。たとえばエアコンの場合、日本では25度前後の適温を保つ機能が求められますが、シンガポールでは冷えれば冷えるほど好まれる。現地のニーズを的確に捉えた商品を低価格で大量に提供する必要が出てきたのです。R&D(研究開発)もすべて日本でやるのではなく、現地の人々が欲している商品を現地スタッフが開発してローコストで提供する時代になりました。

このようなパラダイム転換の時代に求められているのは「答えのないことを決められるリーダー」だと思います。これまでのように、ケーススタディや過去の経験を積み上げてロジカルに考えても、正しい答えを導き出すことは難しいでしょう。今は何事もやってみなければわからないからです。

先行き不透明で変化のスピードも速い時代に正しい決断を下すためには、論理力や戦略立案力よりも、直感力が鍵となります。直感を磨くためには、「現場主義」と「コミュニケーション」が非常に重要になってくると思います。