3つ目は、利益率の向上だ。案件ベースの単発的アプローチでキャッチできるのは、「これに困っている」という目に見えてわかりやすいニーズだ。そうしたニーズに対しては競合も同じような提案をしているため、結局は価格競争に巻き込まれてしまう。

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トップセールスと下位セールスの営業成績推移

一方、案件にこだわらずに顧客と関係を築いていけば、まだ明らかになっていない潜在的なニーズをいち早くつかみ、そのニーズを満たす的確な提案をすることが可能になる。そこで顧客に価値を感じてもらえれば、それが競合との差別化になり、値引き不要で適正な対価を獲得できる。

成熟市場においてもっとも心強いのは、安定した売り上げ基盤ができるという4つ目のメリットだろう。

前述の営業担当者アンケートで上位10%と下位10%の営業成績を比べたところ、2005年の時点で上位と下位に8.1倍の差があった。リーマンショックが日本経済を襲った後はどうなったか。08年は格差が14.0倍に、さらに09年には17.1倍に広がった。市場環境が悪化するにつれて差が広がったのは、トップセールスがロイヤルカスタマーに支えられて下げ幅を最小限に抑えたのに対し、得意客のいない下位グループが壊滅的に成績を落としたからだ。

では、トップセールスはロイヤルカスタマーをどうやって獲得したのか。それはヒット商品があったからでも、値引きして気を引いたからでもない。継続的にアプローチを続けてきたからこそ、不況でも揺るがない強固な信頼関係を築くことができたのである。