一方、クライシス・コミュニケーションでは垂直方向の情報発信もしなければならない。それは情報を総論と各論に分けて伝えるという意味である。

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非常時に必要なのは体系化された情報

総論の根幹になるのが、どういう考え方で対策を実施するのかというポリシーである。そのポリシーに基づいて戦略が語られ、戦略に基づいて戦術が語られていかなければいけない。

垂直方向の情報体系なしに各論の情報だけが出てくると、人々は情報の位置づけができず不安に陥ってしまう。しかし、農産物の出荷制限や水道水は飲まないほうがいいといった各論だけがバラバラに発信されてしまった。

では、どうすればよかったか。

まず、「放射能は目に見えず恐怖心が高まりやすいので、疑わしきは罰するという方針で措置を取る」と、根幹となるポリシーを明示する。

次に、ポリシーに基づいて放射能対策を予備的措置、法に基づく措置、緊急措置の3段階に分けて実施していくと宣言する。この部分が戦略であり、こう整理することで措置には3段階あるというイメージを国民は持つことができる。

そのうえで「今回は予備的措置を取る」と位置づけを示し、各論の情報を発信していけば、国民の受け止め方は「3段階の一番軽い措置だな」とだいぶ違ったはずである。

ポリシーと戦略を語らずいきなり各論に入るから、予備的措置が緊急措置のように聞こえてしまうのだ。そこに「直ちに害はない」と付け加えても「長い目で見たらダメなのか?」と、かえって不安をあおる結果になってしまう。

以上のように政府の情報発信が水平方向にも垂直方向にも体系化されていないためにみんなが混乱し、外国人が日本からどんどん逃げていくという事態を招いた。情報発信が体系化されていないと、受信する人は体系化した受け止め方ができない。パニックが起きやすい事象では、情報を体系化して語ることが極めて重要である。