「ほっ」とするアイテムに時代の空気がマッチ

「スイーツの中で、パンケーキはなぜ人気なんでしょう?そしてこのブームはまだ続きますか?」といった質問を受けることがあります。今回は、依然流行っている感じがするパンケーキについて考えてみます。

ここしばらくを振り返ってみると、スイーツの領域でヒットしたものと言えば、「ドーナツ」「ロールケーキ」「バウムクーヘン」などが挙げられます。考えてみればどれも新しいものではなく、むしろ「どこか懐かしい」ものばかりです。まずその背景には何があるのでしょうか?ここでは3つの点を指摘しておきます。

1つは「華やかさ離れ」です。しばらく前にパティシエブームがありました。「モンサンクレール」の辻口さん、「サダハル・アオキ」の青木さん、「トシ・ヨロイヅカ」の鎧塚さんなど、繊細でクリエイティブなスイーツを生み出すパティシエ達に注目が集まりました。もちろん彼らの人気が落ちたわけではないでしょう。けれども、そんなパティシエが生み出すキラキラしたスイーツに対して、受け手の中に少し飽きや疲れが出てきているのではないかとも感じます。このことは、オシャレなダイニングやバーよりも、ワイワイしたビストロや食堂が支持されているのと通じるものがありそうです。スイーツにおいても、きらびやかなものよりはどこかほっとするようなアイテムに、時代の空気はよりマッチしている気がします。

上記とも関連しますが2つ目としては「カジュアルな価格」が挙げられます。またパティシエを例に出しますが、彼らのつくるケーキは1つが平気で500円くらいしてしまいます。それを4つ買えば2,000円、6個ならば3,000円にもなります。それに比べれば、クリスピークリームドーナツは1個200円前後、人気のロールケーキ「堂島ロール」も1本1,260円で購入することができます。自分一人ならまだしも、大勢で食べようと思ったら、このカジュアルな価格は強い魅力です。

そして3つ目は「みんなでシェア」です。家族で食べる、あるいは手土産にしてみんなで食べるというシーンを想像してみてください。銘々が違うケーキを食べるのも悪くありませんが、ドーナツやロールケーキ、バウムクーヘンなどの方が、「みんなで仲良く同じものを食べている」という気になりやすいのではないでしょうか。そこにはある種の連帯感や団らんが生まれやすいはずです。これも時代の求める空気と相性が良いものと考えられます。

上記に挙げた3点が、私が考えるこれらのスイーツが流行った理由です。ロジカルというよりは、非常に情緒的な見方ではありますが、そもそもスイーツがヒットした理由に明快なロジックなどあるはずもありません。あくまで人々の「感覚」が実際のブームやトレンドを引き起こしているのですから。