東レ経営研究所 特別顧問 
佐々木常夫氏

仕事の時間を効率的に使いたいと思うのなら、何よりも、その気持ちを強く持つことです。私は「志」といっていますが、そういう人は自分で工夫します。本を読んで真似をしようと思ってもダメ。それは俄勉強でしかありません。普段からの習慣づけが大切です。

私は東レの繊維企画管理部の課長時代から、家庭の事情で毎日6時には退社しなければなりませんでした。理由は長男が自閉症であることに加え、妻が肝硬変のため何度も入退院を繰り返し、私が子供3人の育児、家事、そして妻の看病という1人3役をこなしていたからです。

当然、仕事の段取りを良くしなければ無理です。朝から「今日、仕事を最短コースでいくにはどうしたらいいか……」と頭を絞りました。毎日、時間効率を考えている人間と、何も考えないでダラダラと深夜まで会社にいる人間では勝負になりません。10年も経てば、ものすごい差になって表れてきます。

段取りのコツは仕事の整理、いい換えれば“見える化”です。会社にはやたらと多くの仕事がありますが、その8割は定型仕事で、そのすべてを完全にやっていたのでは時間がいくらあっても足りません。本当に重要な仕事は2割です。これをきちんとやれば、その人の抱える仕事のほとんどは達成できてしまいます。

その際、仕事の重要度に応じてプライオリティをつけることも効果があります。仕事の軽重を見極め、重要度の高い仕事に集中するわけです。もちろん、雑用であっても、しなくてはならない業務もあります。それは後に回すか、他の人に任せればいい。プライオリティの高い仕事を選択し、自らデッドライン、すなわち締め切りを決めて追い込んでいくのです。