12年12月に新首相に就任した安倍晋三氏が、日本経済の再生プランとして提示したのが「アベノミクス」と呼ばれる経済政策だ。日本は再び成長軌道に乗るのか、それとも破壊で終わるのか、徹底討論する。

市場は再生への期待感ふくらむ

「10年以上にわたるデフレからの脱却は人類史上初になる」

(AFLO=写真)

安倍晋三首相はこう胸を張り、約20兆円にのぼる「日本経済再生に向けた緊急経済対策」を発表し、総選挙前に掲げた「アベノミクス」がスタートした。

日経平均株価は2012年末の大納会の日に年初来高値を更新、13年1月4日の大発会ではそこからさらに292円も上昇。11年ぶりの上げ幅を記録した。円も一時、1ドル=90円台で、年明けの東京外為市場は2年5カ月ぶりの円安ドル高水準が続いた。

「アベノミクスで、円安、株高の流れになっていますが、市場はこれまでの“失われた20年”で陥ったデフレから脱却するとの期待感にふくらんでいます」(全国紙経済部デスク)

当然、財界も安倍首相に熱いエールを送る。三井住友銀行頭取の國部毅氏もその1人だ。

「製造業を復活させる、あるいは海外進出を支援する、新しい成長企業をつくることに大変スピーディーに取り組み、市場も日本経済が大きく再生へ動き出す期待感を強く持っています。我々も積極的に金融の面でお手伝いしたいと思っています」

株価とともにアベノミクスに敏感に反応したのは為替相場だ。一時は1ドル=75円付近まで円高が進み、総選挙直前では80円前後で高止まりしていたものが、政権交代後に急激な円安が進み、13年1月18日には90円台と最高値より15円も円安方向に進んだ。「円安が1ドル=100円まで進めば、東証一部上場企業の13年3月期の経常利益は、前期比30%超えの増益になるとの予測もある」(経済部デスク)だけに、円安進行への期待は大きい。特に製造業はドル=円相場の動向は死活問題だ。その点について富士フイルムHD会長の古森重隆氏が期待をこう語る。

「日本の製造業にとり、今までの円高はアンフェアなレートでした。3年3カ月の民主党政権下の無為無策で、円高が放置されてきた。電機業界で巨額赤字を出したメーカーもある。競争力の弱い順に同様のことが起き、国内の製造業は成立しなくなる。円高レートは我々の力では如何ともし難い。リーダーシップを発揮できる安倍首相に、大きく日本を変えてもらいたい」