ビジネスマンに必要なユーモアとは何だろう。商談中に爆笑をしてもらう必要はないが、相手との距離を縮めたり、よい空気をつくりたい。心をくすぐる程よいスパイス加減とは。各界の先達たちの言葉からそのあり様を探った。
トニー・ブレア元英首相(AFLO=写真)

イギリスの第73代首相、トニー・ブレアは機知に富む人間で、ユーモアの意味をよく知っていた。

圧勝で首相に再任された2001年、ブレアは時のアメリカ大統領のジョージ・W・ブッシュと初顔合わせをした後、共同で記者会見に臨んだ。あるイギリス人記者が「ふたりの共通点は見つかりましたか」と大統領に質問した。ブッシュは、

「ふたりともコルゲート歯磨きを使っている」

と軽口をたたいた。横にいたブレアはすかさず、合いの手を入れた。

「どうしてそれがわかったのか、怪しまれるよ、ジョージ」

ジョージ・ブッシュ元米大統領(PANA=写真)

ユーモアを理解するイギリス首相はブレアひとりではない。

ガーター勲章を受章したイギリスの大宰相ウィンストン・チャーチルもまた、機知に富む人間だった。

日本軍が真珠湾を攻撃した1941年12月、ホワイトハウスに招かれたチャーチルはバスタブを使った。お湯からあがった後、偶然、フランクリン・ルーズベルト大統領が通りかかったのである。裸だったチャーチルはこう言った。

「大統領、私はアメリカ合衆国に対して、何も隠すものはありません」

どちらもブッシュ大統領の回顧録に載っている挿話だが、彼がこうした話をいくつも書いているのは、欧米の政治家にとって、ユーモアは勇気、信念などと同じように必要な資質と考えられているからだ。