友達の数が年収を決める「NQ」

社会から求められる能力は時代とともに変わります。人々が狩猟や農耕によって生活を支えていた時代は、フィジカルの強さを持った人が高く評価されました。大きな転機となったのは18世紀の産業革命。工業が盛んになるにつれて知識、知性のある人、つまりIQ(知能指数)が高い人が高い収入を得るようになりました。

経営コンサルタント 
野田宜成氏

長らく続いたIQの時代もバブル崩壊で曲がり角を迎え、入れ替わるようにして注目を集めたのがEQ(感情指数)です。例えばカメラのCMは機能のアピールから、「思い出を残そう」と消費者の感性に訴えるようになり、流通分野では、1人ひとりの趣味嗜好、ライフスタイルを満足させる東急ハンズのような店が流行。メディアでも心の時代、感性の時代というキーワードがもてはやされました。

ところがここ1~2年で、風向きが変わりました。いま注目されているのは、人とのつながりの強さ=NQ(ネットワーク指数)。2010年はツイッターやフェイスブックのユーザー数が爆発的に増えて、SNSを介して情報がやり取りされるようになりました。

またマーケティングでも、口コミが大きな影響力を持つように。こうした時代を知性や感性だけで生き抜くことは難しい。いかに多くの人と深くつながっているのか。それが明暗を分けるのです。

この流れは東日本大震災以降、さらに加速しています。震災による直接的な被害や自粛ムードによって、企業活動を制限された会社は多かったはずです。

ただ、その中でも顧客や取引先とのつながりが強い会社は、「こういうときだから応援しよう」と支えてもらえました。このとき顧客が見ていたのは、企業規模や売り上げではありません。普段からの関係性、つまりNQの高さで会社を評価する時代になったのです。

これは個人も同じで、これからはNQの高い人が活躍する社会になるでしょう。ただ、かつての中間管理職に多かった調整型ビジネスマンとは少し違うので要注意です。たしかにNQの高い人は調整能力に長けていますが、どちらかといえば長屋の世話人のイメージ。会社の利益のために調整するのでなく、一銭にもならないことでも、みんなのために喜んで汗をかく公共心が根っこにあります。

どちらにしても和を重んじる日本人は、NQが高い人が比較的多いはずです。日本経済の苦戦が伝えられていますが、むしろこれからは、時代の変化を大局的にとらえる日本人が活躍するチャンスは増えてくるはず。そうした流れに乗り遅れないようにNQを高めていきたいですね。