インド式算数はどこへいった?

インドの教育現場に、何が起こっているのか。インド人が特に理系の分野で優秀であることの理由としてよく挙げられるのが、小学校時代から徹底的にたたきこまれるという「インド式算数」だが、なぜPISAの「数学的リテラシー」では惨敗したのか。

カラフルなチップで、6ケタのかけ算の復習中。指導するアンジェリー先生。

その謎を調べるべく、首都デリーから車で1時間半ほどのところにある、ウッタル・プラデーシュ州ノイダにある私立の小学校の授業を取材してみた。

まずは7歳児の小学校2年生の教室。1クラス15人の少人数であるのみならず、何と算数の先生が2人もいる。全員に目が行き届き、落ちこぼれが出にくいシステムを取っている。

授業で使っていたのは、プラスチック製のカラフルな四角いチップに数字が書かれている教材。これはゲーム感覚で楽しくかけ算を勉強するためのものだが、2人一組で早く計算を終えたチームの勝ちという競争も取り入れている。だから子供たちも真剣なまなざし。楽しくモチベーションを高める工夫を凝らしているのだ。

えーと、えーと、と一生懸命に宙に指で数字を書いてはチップを慎重に置く姿は、ほほえましい。正解したチームの子供たちには、ニコニコ笑顔の先生がハイタッチ。「思い切り褒めてやる」ということも大切にしている。「重要な教科である算数を楽しみながら興味を持って学べるように、教材にも教え方にも工夫をしているんです」とは、このクラスの担任のアンジェリー先生の弁。

確かに楽しそうではある。ただ……、日本でよく知られている「インド式算数」とは、どうも様子が違う。「20×20まで暗記する」とか「99×99まで2ケタのかけ算はすべて瞬時にできる」などといわれる、ある意味ですさまじい「インド式算数」はどこへいったのか?