もちろんごくわずかな利益率であっても、きちんと営業なりマーケティングなりを行い、それによって製品やサービスを販売することによって得た売り上げから捻出した正当な利益であれば問題ない。しかし、実はこの程度の利益というものは、ちょっとした会計操作によって、何の苦労をすることもなく、損益計算書に計上することができるのだ。

会計の操作方法は、いろいろ考えられる。たとえば、3月31日が決算日の会社であれば、4月1日以降に発生する売り上げを1日ずらして、3月31日の数字として立ててしまう。あるいは3月31日に発生する経費を、4月1日以降に先送りしてしまうというようなケースも考えられる。いずれにせよ、年間の売り上げが10億円もある会社の場合、100万円前後の会計操作など、わけもなく行うことができるはずだ。

このような経費の先送り、売り上げの前倒しといった類の会計操作は、恐らく多くの会社が、あまり罪の意識を持たずに行っているのではないかと思う。

実際、上場企業のなかにも、過去、この手の利益操作を行うことで、本当なら赤字転落なのに、何とか黒字を維持したように見せかけるというケースがあった。

2007年初頭、日興コーディアル証券の不正会計問題が騒ぎになったが、このときの数字は190億円の売り上げ水増しだった(06年の経常利益)。同社は売上高が4900億円という巨大企業である。100億程度の金額であればどうにでも動かせたのである。

また、同じく粉飾決算事件を起こしたカネボウでは、03年に売上高5300億円に対し、80億円の売り上げ水増しを行っていた。金額だけ見ると大きいが、これも利益率に換算すると約1.5%にすぎない。同社は、とにかく何とかして赤字を隠そうとしていた。02年の決算でも、実際は260億円の赤字を、7000万円の黒字というギリギリ利益が出る数字に変えていたのである。