人びとはどのサービスをどの程度利用し、その傾向は年々どのように推移しているのか――。プレジデントオンライン編集部がビデオリサーチ社と共同で お届け する本連載。首都圏の消費者を「お金持ち」層(マル金、年収1000万円以上)、「中流」層(マル中、年収500万円以上から1000万円未満)、「庶民」層(マル庶、年収500万円未満)という3ゾーンに区切り、生活動態の分析を試みている。


 

年収の違いは生活の違い、であることは動かしがたい。しかし嗜好までもがそれに左右されるのであろうか。ビデオリサーチ社のACR 生活調査はそんな素朴な疑問も解き明かしてくれる。

たとえば、酒。

年収の高い人たちが飲む酒といえば、一般的にイメージするのはワインだろう。しかし実際はどうなのだろうか。

まずはこのグラフを見てもらおう。

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男女20歳以上における「3カ月以内の飲用経験率」。

実際はマル金層のワイン飲用率はダウントレンドで、代わってマル中層とマル庶層は2009年以降じりじりと上昇を続けている。

これをどう見るべきか。おなじみのフランス、イタリア産に加えて、コストパフォーマンスのよいスペインやチリ産ワインが出回ったことで、「ワインを飲む」という感覚が必ずしも高級志向であるとは言えなくなったのではないだろうか。財務省関税局調べによる「ぶどう酒」の輸入量推移を見ると、特にここ10年のチリワインの躍進は大きく、2001年には9,085キロリットルだったのに対し2011年には24,175キロリットルと約2.5倍になっている。

またスペイン・バルや立ち飲みワイン居酒屋のブームなどもマル中層とマル庶層をワインに結びつけたとも言えそうだ。

一方のマル金層ワイン派は、2011年は前年から約5%減。震災の影響があり、ワインを飲むことを自粛する傾向があったのかもしれない。翌年、やや持ち直していることを見ると「ワインは贅沢」という思いはマル金層ほど高かったということを感じさせる。

次に日本酒はどうだろうか。グラフ上段を見てほしい。

2012年、他層が横ばいなのに比べて、マル金層の日本酒志向は回復してきているようだ。

2011年は山口県の「獺祭」が注目された年だった。その年の純米酒大賞やロサンゼルスで開かれたインターナショナルワイン&スピリッツコンペティションで金賞を受賞したりと世界的に脚光を浴びた。「獺祭」はその後も人気が衰えず、その銘柄を店頭に掲げる店も少なくない。

そういった日本酒の「ブランド化」が進み銘柄にこだわる店舗が増え始めたことで、マル金層の日本酒ファンを増やしたと言えるだろう。また、震災復興で酒どころの東北を支援しようという心理が働いたことも好調な要因かもしれない。

最後に焼酎を見てみよう。マル金、マル中、マル庶のいずれの層も2008年から2011年まで下がり続けており、2012年にやっと持ち直している。ビデオリサーチ社のA調査員はこの結果をこう見る。

「ここ数年、どの層も連続して落ち込んでいることから、一時の過熱気味な焼酎ブームが去り、にわかファンが離れていく過程にあったのかもしれません。また、かつてはいろいろな銘柄を試すこと自体が楽しみのひとつでしたが、好みの銘柄が絞られて、マーケットが落ち着いてきたと見ることもできます。そういった動きが11年にやっと底を打ち、昨年やや盛り返したのではないでしょうか」

とはいえ、水準としてはまだ日本酒を上回っている焼酎。ここで踏ん張るのか、それとも日本酒が焼酎に続くブームとなり追い抜いていくのか。日本酒がマル中層、マル庶層の心をつかめるが鍵である。

次回は酒の2大カテゴリである“ビール”と”発泡酒・新ジャンル”を、銘柄人気にまで掘り下げてみよう。

※ビデオリサーチ社が約30年に渡って実施している、生活者の媒体接触状況や消費購買状況に関する調査「ACR」(http://www.videor.co.jp/service/media/acr/)や「MCR」の調査結果を元に同社と編集部が共同で分析。同調査は一般人の生活全般に関する様々な意識調査であり、調査対象者は約8700人、調査項目数は20000以上にも及ぶ。