ミャンマーは天然ガスなどの資源が豊富なうえ、インド洋へのアクセスもいい。地政学的にも極めて重要な位置にある。米国としては、これ以上中国の影響を認めることができない、という判断が働いたことは間違いない。

中国主導のミャンマー開発を打ち崩すため、米国はアウンサンスーチー女史と水面下で協働しながら、政府と粘り強く対話を続けてきた。そして、現テインセイン政権による民主化路線にお墨付きを与える段階を見極めて、段階的に経済制裁の解除を行う。これが昨年、2012年の流れだった。

もちろん、日本のプレゼンスもここにきて急上昇している。前述のとおり、日本が主導して、ミャンマーの延滞債務問題解決の道筋をつけたからだ。新国家建設において一番のネックが、この延滞債務問題だった。日本は、自国宛ての5000億円の延滞債務をリファイナンスするスキームによって、世界銀行やアジア開発銀行などの新規マネーを動かすことに成功したのだ。

ミャンマー進出による日本経済再興はあるのか?

以上のように、日本はミャンマーのインフラ整備事業へのファイナンススキームをバックアップすることで、同事業の日本企業による受注を実現し、企業のバランスシートを改善させるという仕組みを、短期間のうちに作り上げることに成功した。そして、安倍新政権もこの仕組みの効果を、アベノミクスの経済政策実現の伏線として重要視している。

また、こうした資金還流の仕組みだけでなく、実際にミャンマーにおけるインフラ整備が進むことこそが重要だ。消費市場や労働市場を狙っている他分野の企業の進出を後押しし、間接的に日本企業の経済活動の拡大に寄与するからである。

「アジア最後のフロンティア」と言われるミャンマー。この地で、日本企業が優位な立場で経済活動を行うことを、国をあげてバックアップするのは、アベノミクスが掲げる成長戦略の伏線だ。それは同時に、日本が戦後、飢えに苦しんでいたとき唯一米を送ってくれた同胞ミャンマーへの恩返しでもある。

世界が注目する経済戦争の主戦場で、日本がどこまでプレゼンスを上げることができるか。アベノミクスによる日本経済再興という視点からも見守っていきたい。

■本記事に関するお問い合わせは下記までお願いいたします。
shishido@alrf.asia 公式サイト:http://alrf.asia/