2013年4月5日(金)

かつお節を倍にしても旨味は倍になりません

プレジデントFamily 2011年4月号

大塚常好=構成 市来朋久=撮影 塩出尚子=撮影協力
先生:和洋女子大学教授 畑江敬子
――何げなくやっている組み合わせにも、科学的な理由があるんですね。

 

先生昆布でもかつお節でも煮干しでも水の重量の2~4%を用意するといいましたが、かつお節を2%から8%に増やしたとしても、旨味は4倍には増えないことがわかっているんですよ。旨味成分が水に出てくる限界の量があるんですね。
 また、だしをとるときに火を使わない方法もあります。「水出し」です。水の中に、20度の水なら16~20時間、5度の水なら32時間、かつお節を漬けておくだけ。旨味成分が水に溶け出してくるというのは化学反応の一種で、化学反応は温度が高いほど早く進むので、火を使わないと長い時間かかるんですね。

――果報は寝て待て、ですね。

 

先生人が味覚で判定する官能評価では「お吸い物の上品なだしになる」という評価でした。味・香りとも煮出したときより上品。渋味、酸味もなく、高級料亭の味になります。

――料亭の味、試してみたいです。

 

先生そのほか、お吸い物を作るときに知っておきたいのはだしの相乗効果についてです。

――植物性の旨味成分と動物性の旨味成分を合わせるといいというものですね。

 

先生そうです。一番だしでは植物性の旨味である昆布のグルタミン酸と、動物性の旨味であるかつお節のイノシン酸が合わさると旨味が1+1=2ではなく、7にも8にもなることがわかっています。これが、旨味の相乗効果。
 ちなみに煮干しだしのみそ汁では、みそがグルタミン酸をたくさん含んでいて、煮干しがイノシン酸を含んでいるので、旨味の点でも理にかなっているのです。

――ついでに、その「旨味の相乗効果」のウンチクを子供に聞かせたら、まさに食育ですね。

 

先生寒い時期にぴったりの、同じ旨味の相乗効果を期待できる料理が、鍋物です。水炊きなら、昆布(グルタミン酸)のだしに、鶏肉(イノシン酸)、それに白菜など野菜(グルタミン酸)やキノコ類(グアニル酸)も加わって、風味調味料だけでは出せない、奥の深い味になります。ふだんはあまり料理をしないお父さんが、鍋を囲みながら、「これは理にかなった旨味のハーモニーの料理だ」と子供に解説したら、ぐんと株が上がりますよ。

 

結論:かつお節、昆布、煮干しの量は水の2~4%が最適です

 

一番だしをとるのに使う薄く削られた花かつお節は、酸化して質が劣化しやすいので、開封したら密封して冷蔵庫で保存し、早めに使い切るのがいいとか。乾物だと思って戸棚にしまっていたのを改めたい。

 


先生:畑江敬子/和洋女子大学教授
お茶の水女子大学名誉教授。調理科学一筋50年。今まで研究したテーマはだし、米、魚、高齢者の食生活などさまざま。内閣府の食品安全委員会の委員も務めている。

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