被災地のお客様の声が
次なる開発の原動力に

──できる限りオリジナルの技術にこだわる。そうしたダイワハウスの基本姿勢の背景には、どのような想いがあるのでしょうか。
技術をより良いものにしていくためには、オリジナルにこだわり、その中身を熟知していることが大事、と語る山下チーム長。

山下 これは耐震や住まいの安全の分野に限りませんが、どんな世界でも100%完璧な技術というのはそう存在しません。つまり技術というのは、常に進歩、革新していくものであって、ある面でそれを担っているのが私たち技術者です。

そう考えれば、新しい技術を生み出していく私たちが、既存の技術について熟知していることは非常に重要です。何かを改善、改良していくにあたっても、現状を正確に把握していなければ本質的な開発というのはなかなかできないのです。

また、お客様から技術や性能に関するご質問やお問い合わせをいただいたときなどもそうです。開発における試行錯誤のプロセスを正しく理解していれば、「なぜ、こうした装備が必要なのか」「どのような仕組みで効果を発揮するのか」など、自信をもってお答えできます。だからこそ、ダイワハウスではオリジナルの技術を追求しているのです。

──長く地震対策の技術開発に携わられている立場として、お客様にどのような住まいを提供したいとお考えですか。

山下 一言でいえば、「安心できる場所」としての住まいでしょうか。住宅に求めるものは、お客様お一人おひとりによって、それぞれ異なるものだと思います。また、その尺度もいろいろでしょう。でも突き詰めれば、落ち着き、安らげる空間であってほしいという想いは共通だと思うのです。

その想いに可能な限り応えていくことが私たちの使命です。それは、単に機能や性能を高めていけば良いというだけの話ではありません。当然、コストをはじめとする現実的な問題もある。どれだけ優れた技術であっても、ほとんどの人が手に入れられないというのでは意味がありません。

その意味でも、独自の技術をもち、それに磨きをかけていくことがやはり重要。「耐震」「免震」「制震」の技術についても、これからまだまだ発展していくに違いありません。その中身をきちんと理解できていれば、どのような工夫でコストを抑えられるかも見えてくるはずです。

──市場のニーズ、お客様のご要望も変化するなかで、研究開発も大変だと思います。

山下 そうですね。地震ということでいえば、我々は東日本大震災という痛ましい経験をしました。そこで今後、研究開発していく上で新たにしたのは、「想定外」といわれる範囲を極力小さくしていかねばならないという想いです。

技術というものは最終的にお客様に貢献することが大事ですし、それが技術者のやりがいにもつながります。これまで「想定外」とされていた事態にどう対応するか。これは、今後の開発の動機づけになります。

──東日本大震災後、お客様の声を聞く機会などはありましたか。

山下 私自身、被災地で20~30戸ほど、当社の免震住宅のオーナー様宅を訪問して、点検作業を行いました。そこでいただいたオーナー様からの声には、本当にうれしいものがいくつもありました。例えば、「近所の方々は、とても怖かったと言っていましたが、うちはそんなことはありませんでした」「足が不自由ですが、揺れている最中も室内を歩くことができました」といったものです。

多くのお客様が、ダイワハウスの免震住宅を信頼してくださっていて、「地震発生の際も慌てずに済んだ」ということは大切にしたい話だと感じました。なぜなら、地震発生時の動揺やパニックは被害の拡大につながりかねないからです。そうした信頼に、私たちはより高いレベルで応えていくことが義務だと考えています。

──最後に、今後の抱負について聞かせてください。

山下 やはり先進性や革新性といったダイワハウスのDNAを大切にしながら、新しいことにチャンレンジしていきたいですね。

1955年に大和ハウス工業が発売した「パイプハウス」。

当社の歴史を振り返れば、創業商品「パイプハウス」などはまさに革新性の象徴といえます。1950年、近畿地方や四国地方に甚大な被害をもたらしたジェーン台風が去ったあと、大和ハウス工業株式会社の創業者石橋信夫はあることに気付いたのです。多くの家屋が倒壊してしまったなか、水田の稲は折れずに立っている、竹林もそうだ――。そこにヒントを得て考え出したのが、中空の鉄パイプを使った「パイプハウス」だったのです。

その後も、プレハブ住宅の原点ともいわれる「ミゼットハウス」を考案するなど、常に住宅業界のパイオニアとして業界をリードしてきたのがダイワハウスです。繰り返しになりますが、技術の世界に100%はありませんから、地震対策の分野でも、できること、やるべきことは、いくらでもあるはずです。「安心できる住まい」のために、今後もこれまでにない価値を生み出していければと思います。

耐震システムなどの実験動画も見ることができる!
ダイワハウスの地震対策がより詳しく分かるホームページ

ダイワハウスでは、同社の地震対策システム「DAEQT」(ディークト)について、詳しく紹介したホームページを公開している。実物大の住まいによる実験動画やお客様インタビューなども見ることができる。

ダイワハウスの「耐震」「制震」「免震」技術
http://www.daiwahouse.co.jp/jutaku/lifestyle/daeqt/index.html