技術的なイノベーションなどにより、その機能や性能を着々と進化させる住まい。戸建住宅における地震対策なども、まさにそうした分野の一つといえるだろう。そのなかで、「耐震」「免震」「制震」の各技術の開発を進め、業界屈指の安全性を実現しているのがダイワハウスだ。業界のパイオニアとして、独自技術を追求する同社では具体的にどのような研究開発が行われているのか。大和ハウス工業(株)総合技術研究所の山下仁崇チーム長に聞いた。

山下仁崇●やました・よしたか
大和ハウス工業株式会社
総合技術研究所 建築技術研究室 鋼構造・振動研究グループ
振動研究チーム チーム長
大学、大学院で建築学を学び、1996年に大和ハウス工業に入社。総合技術研究所に配属され、以来、一貫して地震をはじめ「住まいの振動」に関する研究開発を行っている。

プレハブ住宅メーカー初の
免震システムも開発

──これまで建築物の耐震性に関わる規制は強化されており、2000年には「住宅の品質確保の促進等に関する法律」(品確法)も施行。東日本大震災もあり、住まいの安全性へのニーズはますます高まっています。

山下 そのとおりです。当然、建築基準法にも耐震性能の基準がありますから、それに則って建てられている住まいは、すべて「耐震住宅」ということができます。さらに品確法では、耐震性の評価を1~3の等級で表すことが決められており、これも一つの目安ですね。等級3は、建築基準法の耐震性能の1.5倍となるよう定められています。

とはいえ、その性能を具体的にどのような方法で担保するかはハウスメーカー、工務店によってそれぞれ異なり、ダイワハウスについても独自の技術によってそれを実現しています。

──例えば、ダイワハウスの耐震技術にはどのようなものがあるのでしょうか。
トリプルコンバインドシステム。中央の軸組(柱)をパネルフレームが両側からしっかりと挟み込んでいる。

山下 当社の軽量鉄骨造の戸建住宅では、基本的な耐震技術として「トリプルコンバインドシステム」を採用しています。これは、建物の骨格となる軸組、つまり柱を両側から金属のパネルフレームで挟み込み3本を一体化したもの。建物にかかるタテ方向の荷重と地震時の瞬間的なタテ揺れを支えるのに有効で、その強度はヒノキ角材に換算すると15cm角に相当します(1階の軸組の場合)。

一方、ヨコ揺れに対しては、「耐力パネル」が効果を発揮します。鉄骨のフレームに斜めの筋交いを内蔵したもので、ヨコ揺れを受け止め、その力を柱や梁などを介して抵抗するものです。

そのほか、立ち上がり幅170mmの「布基礎」や引き抜き強度が約70%向上する「異形アンカーボルト」を含む技術は、いずれも戸建住宅商品「xevo」(ジーヴォ)に標準装備されています。実大震動実験で阪神・淡路大震災を超える揺れを与えても、構造躯体に大きな損傷がなかったという結果が出ています。

──その標準装備のほかに、さらなる地震対策の技術があるわけですね。

山下 オプションとして「免震」「制震」を選択できるのが、ダイワハウスの住まいの特長です。研究開発の順序でいえば、私たちは「耐震」に次ぐ地震対策として、免震技術の開発に取り組みました。阪神・淡路大震災発生から3年後のことです。

震災前までは、基本的に「強くて壊れないこと」を第一にしていたのですが、あの地震を経験したことで「いかに揺れをコントロールするか」という視点が加わりました。阪神・淡路大震災の被災地で全・半壊したダイワハウスの家は1棟もありませんでしたが※、室内のものが倒れるケースなどはあったため、「強さ」とは別の側面での追究も重要であることを痛感したのです。

※地盤の変動による損壊を除く