稼いでいる人の多くはお金を擬人化して、あたかも自分のパートナーであるかのように語る。彼らにとって、お金は単なる交換の手段ではなく、人生を豊かにしてくれるよきパートナーなのだ。だからこそ、お金が気持ちよく暮らせるよう、美しい長財布の中に入れて、お金を丁重に接遇しているのだ。

私は、彼らとの意識のギャップに衝撃を受けた。私のようにお金を恨み、汚れた2つ折り財布で冷遇している人間のところに、お金が喜んでやってきてくれるはずなどなかった。

この事実に気づいた私は、相当な背伸びをして2万円のプラダのお財布を買った。500円のマジックテープ財布に比べれば、ずいぶん高価なお財布だ。このお財布を手にしたことで、私はお金をかなり大切にするようになった。だが、お財布には、さらなる深淵があったのだ。

私のように、税理士という仕事をやっていると、申し訳ないことだが、ビジネスパーソンの収入がだいたいわかってしまう。業種、売上高、従業員数といった数字を把握できれば、その会社の社長や役員がどのくらいの報酬を得ているか、ほぼ正確に推測できてしまう。

お財布自体の値段を的中させることができ、お財布の持ち主の年収を推定できるようになったとき、私はこのふたつの間に、恐るべき関連性があることに気づいたのである。

お財布の値段×200=持ち主の年収。

すなわち、その人の年収は、持っているお財布の値段のほぼ200倍なのである。私が幾多のお財布を見てきた経験から言って、ほぼ間違いなく200倍前後の範囲に収まる。年収1000万円の人なら5万円前後のお財布を使っており、年収の2000万円の人は、10万円前後のお財布を使っているものなのだ。