3つの発想の転換で大きな渦へ

発想の転換が必要だろう。第一に、多様な構成員が集まることをそもそもの前提に置くことだ。つまり、多様性を大事にし、過度な統合性を避けるようにすること。第二に、誰かが上から方針や理念を決定するというより、あくまで合意をとりつつ進めること。何より、その地域が大事にしたい価値について、多くのメンバーの合意が生まれるプロセスが大切だ。1つの理念に集約できれば言うことはないが、そのことにあまりこだわりすぎてはいけない。

第三に、ここが大事なところだが、参加しているメンバーの創意工夫を大事にすること。合意した価値に沿って自分は何ができるのか、メンバー各員が考え、そして試行することだ。合意した価値の下に各員が奮闘努力すれば、各所で活動の渦が生まれる。そうして生まれる数多くの小さい渦を重ね合わせて、大きい渦にしたい。

最後に、地域ブランドづくりを着実に展開していくために、ブランド構築の成果はやはりきちんと測りたい。ただ、成果としては、どれだけの収益が増えたか、あるいはエクイティが充実したかではない。「新しい価値を旗印にすることで、どれだけの渦が各所で起こったか」が大事だ。どれだけの新しい試みが増えたか、どれだけのメンバーがそのブランドを導きの杖として活動しているのか、である。いわば、そのブランドがあることで、どれだけ多くのメンバーの「活躍のしがい」が増したのか、である。

地域ブランドは、駅のプラットホームのようなものだ。そこでは、地域を振興したいという共通した思いをもちながら、それぞれに大事だと考えるそれぞれの仲間の価値をもち寄って集まってくる。地域ブランドの旗印の下、それぞれの共同体が創意工夫を発揮する。そこにある融通無碍な柔らかさを生かしたいというのが本稿の趣旨だが、読者の皆さんは、どう思われるだろうか。

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