あるプロデューサーの話を聞いたときも、部下の面倒を見て損することはないなと思いました。そのプロデューサーは大物タレントの食事会と、約束を取りやめてもいい部下の食事会のふたつのスケジュールが重なった場合、下の者との約束を優先するそうです。

目上の人には正直に事情を説明して「申し訳ありません」と謝れば、よっぽど大事な用事だと思って許してくれる。でも、むげに部下のほうを断ると「どうせ自分なんて優先順位が低いんだ」と歪んで取ることがある。つまり上の立場の人は深読みしてくれても、下はしないんです。それが部下との約束を守ると、「自分のほうを選んでくれた」と感謝されるし、上の人からも恨まれない。下に恩を売ることで全体がうまくいく、いい例だと思いますね。

ただし恩を売ることは、最終的には仕事でしかできないんじゃないでしょうか。僕のような放送作家の仕事で言うと、つまらなくなりそうな番組をテロップの文言やナレーションでおもしろくできたときです。演出やタレントが心配していたポイントを作家の力で何とかしてくれたなあ、という仕事の恩は残っていくんですよね。

どんな仕事もできるかぎりの時間を費やして貢献する。もしくは人が「しまった」と思った失敗を、黙ってフォローする。そうした仕事の恩であれば、きっと上司にも伝わると思います。

放送作家 高須光聖
1963年生まれ。大学卒業後、放送作家デビュー。松本人志、浜田雅功とは小中学校の同級生。ダウンタウンのほぼすべての番組を手がける。
(構成=鈴木 工)
【関連記事】
「過干渉」上司をうまく操縦する4つの方法
上司をオトす査定前2カ月の超絶ゴマすり術
権力を握る人は、部下とどんな飲み方をするか