2015年以降からの本格導入が検討されている新・国際会計基準「IFRS」(国際財務報告基準)に関心が集まっているが、これが適用されるのは上場会社と金融商品取引法(金商法)の開示対象となる適用企業のみ(図参照)である。

会社の区分と適用される会計基準
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会社の区分と適用される会計基準

IFRSの開示の基本は「連結財務諸表」の作成にあり、証券取引所に上場している企業が金商法の適用対象であることはもちろんだが、サントリーなど、非上場でも多額の有価証券を発行し、有価証券届出書や有価証券報告書などを作成している会社もある。また、株主数が一定数以上あれば、やはり金商法適用企業となる。ほかに会社法で規定される大会社(資本金5億円または負債総額200億円以上)などがあるが、IFRSの作成義務はなさそうだ。

では、中小企業はIFRSとは無縁なのかというと、答えはノーである。国際会計基準審議会では、中小企業(SME)向けのIFRSを策定し、09年に公表している。SME向けIFRSは、IFRSの基準を緩和したもの。その一例として、連結決算の実施における持分法と原価法の選択制が挙げられる。たとえば、A社がB社(資本金1000万円)に300万円を投資していたとしよう。A社のB社に対する持分割合は300÷1000で30%となる。A社のバランスシートにはB社投資額300万円が記載される。

さて1年後、B社は300万円の利益を生み出した。原価法ならB社への投資評価額は先の300万円のままである。

しかし、持分法だと、利益の300万円に対する30%の持分、つまり300×0.3=90万円分の利益が資産として計上される。結果、A社のB社に関する投資評価額は300+90=390万円に増加する。

SME向けIFRSを適用するかどうかは各国が独自に判断することになっている。日本では、財務会計基準機構が非上場会社の会計基準に関する懇談会を設置し、適用基準などについて検討している。

ひと言で中小企業といっても、上場企業に近い規模の会社もあったり、実は大小さまざま。そこで懇談会では中小企業を区分し、経営者がきちんと理解でき、対応がしやすい基準づくりを目指す方針だ。

気になるのは、どのような中小企業にSME向けIFRSを適用するか。現状では図の(3)に当たる会社に適用し、それ以外の企業には適用しないというイメージのようだ。

果たして、それがベストなのだろうか。私見を述べれば、(3)の会社にはIFRS、(4)の会社にはSME向けIFRSを適用するのがいいと考えている。

(3)の会社には、会社法による監査が義務付けられているものの、上場企業に義務付けられた金商法の監査より基準が緩い。そこでIFRSを採用すれば、会社に対する信用性が増す効果が期待できる。

一方、(4)の会社は監査を受ける必要がないが、SME向けIFRSを作成することで信用性はアップする。さらに監査も受けるようにすることが望ましい。これまでドンブリ勘定だった経営者が会計管理に厳しくなれば、企業の競争力も増すからだ。金融機関も、一定以上の会計基準を採用している中小企業に対しては融資しやすくなるはずだ。

ただし、(4)の会社でも、経験的には資本金5000万円程度までの小規模の会社にとっては荷が重く、SME向けIFRSの適用は免除されるべきだろう。

いまや中小企業も海外に出て事業を積極的に展開している時代。国際的な会計基準を採用していなければ、競合がいる中、正当な評価を受けるのも難しい。それだけにSME向けIFRS導入の利点は大きい。