「紹介」を軽く考えてはいけません

営業とは駅伝のようなものだと思います。一区間だけで勝負するのではなく、延々とタスキをつないでゴールします。たとえば最初に接触したときは商売に結びつかなくても、やがてあなたの信用が評判として広く世間に伝わっていき、結局は、たくさんのお客を連れてくるかもしれません。

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細い絆が「紹介」につながることも

こうして2人で話しているように見えても、おのおのが数千、数万の人につながっていると思えば、ちょっとした会見でもおろそかにはできません。私はいつも、その人の背後の数千人と話していると思っています。

さる外資系の生保会社で、セールス世界一を記録した知人がいます。私はその人から保険に入れと勧められたことはありません。十数年の付き合いですが、勉強会などでご一緒するだけで、商売の話は一切なし。私が別の生保に入っていることをとうに承知しているからです。

その人がなぜ抜群の営業成績をあげられたのか。おそらくは、人から人を介して誠実な人柄が伝わり、紹介の輪が広がったからだと思います。

「紹介」を軽く見てはいけません。私は人を紹介するとき、私自身の「信用」を担保に差し出しているつもりです。もちろんリベートは取りません。その代わり、うまく運べば私自身の信用が高まります。そうやってコツコツと信用や評判を高めていけば、やがては商売に跳ね返ってくるのです。

ひとつ渋い話をしましょう。千房は外食業なので、食材関係のいろいろな会社と取引があります。新しい店を出すときに、その店の店長が、ある米屋さんに米びつを提供してほしいとお願いしました。ずっと使ってきた米屋さんですが、その新店舗は配達エリアの外れにあるので、別の米屋さんから仕入れることにしていました。そのため、先方はあっさり「おたくとは取引がないので、ご提供できません」と断ったそうです。