ジェームズ・アレン(James Allen)
ベイン・アンド・カンパニーのロンドンオフィスのパートナー、同社グローバル戦略プラクティスの共同総責任者。ジョンズ・ホプキンス大学卒、ハーバード大学経営大学院修士課程修了。主な著書に、『本業再強化の戦略』(共著)がある。

「私がハーバードビジネススクールの学生だったのは1980年代の終わりごろ。当時、誰もが日本企業を崇拝していた」と語るのは、『リピータビリティ』の共著者、ジェームズ・アレン氏。「たとえばウォークマンを発明したソニーは、世界中で崇められていた」。すべてが過去形なのがさびしい限りである。なぜ、飛ぶ鳥を落とす勢いだった当時の日本企業の多くがいま不振にあえいでいるのか。

「問題は複雑性にある。成長するにつれて組織というものは官僚化し、無意味な多角化にはしりがちだ。ソニーがアップルに負けた理由は顧客のニーズよりもそれぞれの事業部門の成長に焦点を合わせてしまったからだ。顧客の求めていることは何かではなく、複雑な組織をどう動かすかということにエネルギーをとられすぎてしまった」

『リピータビリティ』では、複雑性という「サイレントキラー」に負けない「再現可能な不朽のビジネスモデル」を提唱している。一言でいえば、自社のこだわりや強みを可能な限り単純なかたちに落とし込み、そこに経営資源を集中することで「成功を繰り返す」モデルである。持続的に高い成長を維持している企業の九割以上が、コア事業で競争優位性につながる強力な差別化を打ち立てていることがわかっている半面、あまりに多くの企業が新市場、新事業を模索して、本当に競争力のある事業や商品をおろそかにしている。

「日本企業が復活するためには、なにもいまからまったく新しいことに取り組む必要はない。彼らを偉大にした原点を再発見することが最も大切だ。幸いなことに、日本には成功をおさめた大企業の創業者の意思を脈々と継ぐ人たちが企業のなかにまだ存在している。そこが救いだ。そういう人物をリーダーとして登用していけば、再生可能なモデルを再構築する時間的な猶予がある」。リピート(再現)よりもイノベート(革新)だという人もいるだろうが、自己の強みをリピートすることはイノベーションと矛盾しないのである。