2013年2月22日(金)

「カルシウム不足でイライラする」か?

ノー。摂取量の多い少ないは、直接影響しません。

プレジデントFamily 2011年2月号

福島安紀(医療ジャーナリスト)=構成
先生:東京都リハビリテーション病院院長 林 泰史

カルシウムは人の体を動かすバッテリー

カルシウムというと「骨」を連想する方が多いと思いますが、実は、脳細胞や神経細胞が働くためにも、血中のカルシウムが重要な役割を果たしています。また、筋肉を動かしたり、物を見たり、情報を伝達したりするときにもカルシウムが必要です。カルシウムは人間の体を動かすバッテリーのようなもの。体内には60兆個もの細胞がありますが、そのすべてを動かすためにカルシウムが使われているのです。

では、カルシウム摂取量が少ないと脳細胞に影響が及び、イライラしたりキレやすくなったりするのでしょうか。確かに、病気で血中のカルシウム濃度が下がると、神経細胞がうまく働かなくなって手足がけいれんを起こしたようになります。逆に血中カルシウム濃度が過剰になると、ぼんやりしたり意識がなくなることがあります。血中のカルシウムの濃度によってイライラすることも、考えられなくはないでしょう。

しかし、そういった病気の人は別として、一般的には、たとえ食べ物や飲み物から取るカルシウムが不足しても、血中のカルシウム濃度は一定に保たれるようになっています。

われわれの体というのはよくできていて、口から入るカルシウムが不足した場合には、60兆個の細胞を働かせるために、骨に蓄えたカルシウムが血液の中に溶け出して、血中不足分を補うような仕組みになっています。ですので、たとえば食事やおやつでカルシウムを十分に取っていないからといって、突然お子さんが情緒不安定になることはないわけです。

男子は中学生、女子は小学校高学年が鍵です

イライラに直接関係ないとはいえ、カルシウム摂取量が少なければ結果的に骨の中のカルシウムが減少していくのですから、カルシウムは積極的に取らなければいけません。

一生のうちで一番骨が成長するのは、男の子では中学生、女の子では小学校高学年の頃です。この時期には、年間で平均11%くらい骨密度が上がりますから、骨を丈夫にするために、カルシウムをたくさん取って、しっかり運動しましょう。また、ビタミンDは、カルシウムの吸収を助けます。食品から摂取する以外に、屋外で遊んだりスポーツをしたりして日光浴をすることにより体内で合成することができます。

もちろん、お母さん、お父さんにとってもカルシウムの摂取と運動は大切です。現代人は1日のカルシウム摂取量が不足していますし、とりわけ20~40歳代の女性は、子育てや仕事に追われて体調管理は二の次、三の次になるためか、カルシウム摂取量が少ない傾向があります。牛乳、乳製品は最もカルシウムの多い食品なので、積極的に取ってほしいです。ほかに含有量が多いものに、海産物、緑黄色野菜、大豆製品などがあります。骨が弱ければ、骨折しやすくなり、将来寝たきりになる危険性さえあります。家族で意識的にカルシウムを取るようにしてください。


先生:林 泰史/東京都リハビリテーション病院院長
京都府立医科大学卒業。米テキサス大学骨代謝科留学、東京都老人医療センター院長・東京都老人総合研究所所長などを経て、2006年より現職。著書に、『骨疾患と痛み』(医薬ジャーナル社)など。

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